今回は『メタリックルージュ』について語っていく。
『メタリックルージュ』はボンズ制作によるアニメオリジナル作品で、2024年冬クールに放送された。
アニメ制作はボンズが担当している。
『メタリックルージュ』の感想
※ネタバレ注意!
作画 | 70点 |
世界観・設定・企画 | 70点 |
ストーリー | 60点 |
演出 | 68点 |
キャラ | 50点 |
音楽 | 83点 |
作画
ボンズ制作ということで、作画には期待していたけれど、正直かなり微妙だった。特に日常シーンが何とも言えない。戦闘シーンは迫力あるんだけど、近年はどの作品もレベルが高いので、相対的に微妙に感じてしまう。
世界観・設定・企画
AIとか運命とかをテーマにした世界観。かなりややこしいんだけれどもメッセージ性はいいと思う。ただし、メッセージ性が重いのに対して、これといった革新性がなく、アニメーションの表現も微妙に感じられたことから、冷めた感じが否めない。純粋に予算が足りなかったんだと思う。『エウレカセブン』みたいに予算が乗っかればなぁ。
ストーリー
難しい世界観の上に難しいストーリーを乗っけているので、全体的にかなり難しい。それなりに難しいアニメを視聴してきた僕でも、人形遣い師が登場するまでメッセージ性が掴めなかった。おそらく問題は、難しい世界観の上に難しい設定を付与したキャラクターを立たせてしまったことで、しかも尺がワンクールだったので、収拾がつかなくなったんだと思う。
演出
戦闘シーンの演出はとても良かったんだけど、ボンズにしてはっていう感じが否めない。それと日常親の演出をもう少しどうにかして欲しかったなぁっていうのが正直なところだ。あのちょっと雑な感じも僕は個人的に好きなんだけど、さすがに雑すぎた。
キャラ
キャラの個性が強い強すぎた。それぞれのキャラクターのバックグラウンドが複雑すぎたので、簡単に飲み込めなかった。機動戦士ガンダムやエウレカセブンは、なんだかんだでキャラクターの所属がとてもわかりやすかった。難しい世界観を描く際は、キャクターの設定をシンプルにしたほうがいいのかもしれない。
音楽
メタリックルージュの最大の魅力が音楽だ。とにかく音楽が良い。オープニングとエンディンは時という感じがするし、劇伴のテクノな感じもとても好きだった。エウレカセブンを彷彿とさせた。
『メタリックルージュ』の評価
※ネタバレ注意!
何から何まで難しい
『メタリックルージュ』は何から何まで難しかった。そのうえで、予算が確保できなかったのか、アニメーション表現も相対的に微妙だったため、全体的に冷めてしまった感じが否めない。
例えば、ボンズ制作で「難しいアニメ」の代表格である『交響詩篇エウレカセブン』は、たしかに全体としては難しいんだけれど、レントンのエウレカに対するド直球な想いが芯になっていたから、全体として上手く収まった。『機動戦士ガンダム』も、世界観で難しいことをやっているけれど、基本的には「地球軍VSジオン軍」という構図でシンプルだ。
逆に、世界観が簡単だけどストーリーが複雑な作品としては『俺ガイル』が挙げられる。ファンタジー要素が一切ない学校が舞台で、世界観はとてもシンプル。一方でキャラクターとストーリーが捻くれていて、そこで味わいが出ている。
『メタリックルージュ』に関しては、難しい世界観の上に、難しいキャラクターで難しいストーリーをやっていて、しかも尺が1クールだったから、収拾がつかなくなってしまったのだと思う。しかもTRIGGER作品みたいに、アニメーション表現で押し切れた感じでもなかった。企画と予算集めの時点で、もう厳しかったのではないかと、一視聴者として予測してみる。
世界は舞台である
『メタリックルージュ』の世界観は、たしかに「なんとなくカッコいい」。けれど、尺が1クールしかなかったから、駆け足気味になったし、エンディングも締まりがなかった。ここからメッセージ性を抽出するのは難しかったけれど、『メタリックルージュ』のラスボス枠である人形遣いが、だいぶ直接的なセリフを発してくれたおかげで、ようやく僕でも意図が理解できるようになった。
All the world’s a stage,
And all the men and women merely Players;
They have their exits and their entrances,
And one man in his time plays many parts,この世は一つの舞台だ。
『お気に召すまま』より引用
すべての男も女も役者にすぎない。
それぞれ舞台に登場しては、消えていく。
人はその時々にいろいろな役を演じるのだ
世界が1つの舞台であるように、人造人間「ネアン」の運命は、人間の手によってコントロールされている。自由意志に基づいた行動を取れるとされていたインモータルナインも、実はロイ・ユングハルト(人形遣い師)によってコントロールされていたものだった。
『メタリックルージュ』という作品は、現代社会におけるAIのメタファーだと思われるネタンを用いて、どのようにすれば運命に抗えるのか、自由意志を獲得できるかを説いているように思う。
カウンターを感じさせるメッセージ性は、たしかにボンズっぽい。が、それにしても、やはり全体として難しすぎた。ストーリーを宇宙規模にする必要があったとは思えないし、インモータルナインって言うけどそもそも「9人」は1クールで捌ける人数じゃないと思う。
メッセージ性と音楽がよかっただけに、全体としてなんだかもったいない作品になってしまった。『交響詩篇エウレカセブン』の領域からはほど遠い……。
さいごに
ボンズ制作のアニメオリジナルということで、正直結構期待した。実際、序盤のワクワク感じはよかった。でも中盤から急激に失速した感じが否めない。やっぱり1クールじゃ足りないし、それどころか2クールでも足りそうにないぐらいに風呂敷を広げてしまった感じだ。
難しいことをやるときは、どこかしらを極端にシンプルにした方がいいのかもしれないな。