『モノノ怪』感想:なんだかんだで『化猫』がおもしろいのはなぜ?

モノノ怪

2024年の夏、僕は『怪 〜ayakashi〜』に引き続いて『モノノ怪』も視聴した。理由は、2024年7月より上映されている『劇場版モノノ怪 唐傘』を映画館で鑑賞するためだ。

『モノノ怪』は2007年夏クールにノイタミナ枠で放送されたホラーアニメで、アニメ制作は東映アニメーションが担当した。

目次

『モノノ怪』の評価

※ネタバレ注意!

作画95点
世界観・設定・企画90点
ストーリー88点
演出93点
キャラ88点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

前作のあやかしでストーリーの中の1つに過ぎなかったけど、今回はあのバステストの作画が前編続くのでとても見ごたえがあった。実際、理想している体的なクオリティーは工業しており、特に撮影技術が進化していると感じた。またカット割は相変わらず秀逸で、様々な映像表現が取り入れられていたのも特徴。色の使い方もバリエーション豊富だった。

世界観・設定・企画

本作は、ホラーアニメで、もののけと呼ばれる妖怪みたいなものが登場するが、実際のところはヒューマンドラマなんだと思う。また、作品全体として文章媒体である脚本に頼りすぎておらず、映像表現でストーリーを紡いでいるようにも見えた。

ストーリー

今回も、オムニバス形式でストーリーが進んでいく。いずれもなかなかに、グロテスクなので、深夜アニメ向きと言われれば、深夜アニメ向きだ。それに、サスペンス的な面白さもある。

演出

前作もそうだったが、あの和紙テイストの作画は3DCGをゴマカす役割もある。そして実のところ、和紙テイストの作画以前に、そもそもカット割のセンスが秀逸だ。インディーズの実写映画みたいである。ノンリニア的なのも映像だからこそできる表現だ。

キャラ

主人公の薬売りが、とても良いキャラをしている。櫻井孝宏さんの声質と、会話のテンポ感が、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。

それに対して、ゆかなが声を担当するヒロイン的なキャラが、ゼロ年代当時で言うところの「現代的」で、ここで深夜アニメとのバランスを取っているように思う。

音楽

OP『下弦の月』はバンドネオン奏者・小松亮太とベーシストのチャーリー・コーセイの楽曲。懐かしさのあるメロディーだが、江戸時代を想定していないのは明らか。そしておしゃれ。

EDはJUJUの『ナツノハナ』で、ここで著名アーティストの起用はさすがノイタミナ枠という感じ。

全体的に劇伴は最高にキマッていた。

『モノノ怪』の感想

※ネタバレ注意!

やはり『化猫』が1番おもしろいのはなぜだろう?

今回の『モノノ怪』は『座敷童子』『海坊主』『のっぺらぼう』『鵺』『化猫』の5つの短編で構成されている。いずれも主人公以外は、ストーリーや登場人物が異なるのはもちろんのこと、美術背景の雰囲気も大きく異なる。

『座敷童子』は相当にエグいストーリーで、『海坊主』は性悪説的な人間の本性が垣間見れる。『のっぺらぼう』は本作の中で自己啓発的というか、ある意味で現代的であり、『鵺』のストーリー展開には驚かされた。

それでもやはり、ある意味で原点とも言える『化猫』が1番面白かったと思う。

元々は前作『怪 〜ayakashi〜』でも描かれた『化猫』だが、今回は大正モダン風にリメイクされている。舞台も屋敷の中ではなく、なんと電車の中だ。

『化猫』は、ほかの作品に比べて「密室」という要素が強い。特に今回の『化猫』は、前回と違ってモノノ怪が直接的に登場人物を閉じ込めていたので、なおさら恐怖感が強かった。

それと同時に、登場人物がどんどん壊れていく様子も描かれていく。

結局のところ『化猫』が1番、刺激が強いということなのだろう。密室が作り出すホラー要素と、登場人物がどんどん壊れていくシーン。極め付けは意識がある状態で電車に轢かれるシーンだ。これだけ刺激的なシーンをアーティスティックに描いているのだから、面白くないわけがないのである。

結局、モノノ怪って一体何なの?

結局のところ、モノノ怪とは一体何なのだろうか。

極論を言えばモノノ怪は、人間が生み出したモノである。そのきっかけは様々だが、基本的にはネガティブなものだ。

たまに感動的な幽霊映画があるけれど、そういった要素は本作に一切ない。モノノ怪のエネルギー源は、おそらく怨みだ。

その一方で本作は、シンプルにモノノ怪を退治できるわけではない。なぜモノノ怪が生まれてしまったのかを明らかにする必要がある。

具体的には、物事の結果である「形」、物事に至るまでの過程である「真」、そして関係者たちの想いである「理」の3つだ。

この3つを明らかにすることで、薬売りの持つ「退魔の剣」の力が解放され、問題を解決できる。

たしかに、何かしらの問題が起こっているときというのは、形と真と理がモヤモヤしているときかもしれない。これをハッキリさせることができれば、あとは剣を振り下ろすだけである。

これ、仕事でも人間関係でも活用できる設定なのではないだろうか?

さいごに

2007年に放送された『モノノ怪』だが、17年越しの2024年で劇場アニメが上映された。

ちょうど、本記事を執筆した日に映画館に赴く予定なので、『モノノ怪』の映像表現を大画面で楽しみたいと思う。

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