京アニ史上、最もシンプルで、そしてエモい作品

たまこラブストーリー
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『たまこラブストーリー』について語っていく。

『たまこラブストーリー』は、2013年冬クールに放送された『たまこまーけっと』の続編作品で、2014年4月に公開された。

なお『たまこまーけっと』に引き続き、京都アニメーションがアニメ制作を担当している。

目次

『たまこラブストーリー』の評価

※ネタバレ注意!

作画88点
世界観・設定88点
ストーリー90点
演出90点
キャラ88点
音楽88点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティは相変わらず高い。山田尚子作品ということもあり、繊細な心情描写や女の子の可愛らしい動きが印象に残る。バトンの動きもめちゃくちゃ良かった。

世界観・設定

『たまこまーけっと』のコミカルな雰囲気を排除し、そこら辺で見受けられる高校生の恋愛にフォーカスした世界観となっている。それだけ見ると超絶シンプルな設定だが、実のところ、超王道の恋愛ストーリーがアニメオリジナルで描かれることはほとんどない。一周回って奇をてらう感じの作品だ。

ストーリー

全体的なストーリー自体は、先ほども述べた通り超シンプル。しかしシナリオの練り込み具合が凄まじい。また、アニメオリジナル作品ということで、”アニメだからできる演出”を引き立てるためのストーリーになっている印象を受ける。しかしだからといって、計算臭い作品になっているわけでもない。この辺のバランス感覚が非常に良かった。

そして実際、僕も『たまこラブストーリー』の世界観に引き込まれてしまった。集中を切らすことが一切なかった。

演出

『たまこラブストーリー』の最大の魅力は、演出だ。とにかくキャラクターの心情描写がレベチである。

それに加え、これまでの京アニ作品で見受けられた演出も見られた。例えば、たまこのスキップは『CLANNAD AFTERSTORY』の”あのスキップ”なのだろうし、みどりが校庭を駆け抜けるシーンは『劇場版けいおん!』の屋上でのシーンの演出を模したものだろう。

キャラ

『たまこまーけっと』における最重要人物であるデラ(鳥)を排除したのが『たまこラブストーリー』の最大の特徴かもしれない。鳥を排除したことで、高校生の青春だけにフォーカスした世界観となり、かつ、みどりがとても引きたてられたように思う。

音楽

音楽は最高に良かった。たまこの父・豆大が作った曲『恋の歌』にフォーカスしたのは、とても良かったと思う。

『たまこラブストーリー』の感想

※ネタバレ注意!

京アニ史上、最もシンプルな作品

もしかしたら『たまこラブストーリー』は、京アニ史上、最もシンプルな作品と言えるかもしれない。やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』も『けいおん!』も『氷菓』も『日常』も、非常に個性的な作品だったと言える。そして『たまこラブストーリー』の後に公開された『小林さんちのメイドラゴン』や『響け!ユーフォニアム』なども、やっぱり個性的な作品である。

普通に考えれば、これは当たり前な話で、数多くのアニメ作品の中で抜きん出るには、それなりに奇抜な設定を盛り込む必要があるからだ。

そして『たまこまーけっと』は、それなりに奇抜な設定が盛り込まれていた。鳥だ。あの喋る鳥は、やはり作中でも中々のキーパーソンだった。

しかし『たまこラブストーリー』では、あの”鳥”を排除することで、本当にありきたりな高校生の恋愛&青春を描いた作品になっている。そして何よりも重要なのは、このシンプルな作品を、アニメオリジナルでやっているということだ。

個人的に『たまこラブストーリー』は、京アニというよりも、P.A.WORKSが作っている作品に近いように感じる。世界観とかストーリーはP.A.WORKSっぽいけど、演出とキャラクターだけ京アニという感じ。

そして『たまこラブストーリー』は、演出が素晴らしい。特に常盤みどりの心情描写は、とんでもないことになっている。

アニメオリジナルだからこそできること

もう一度言っておくが『たまこラブストーリー』はアニメオリジナル作品である。そして京アニは、アニメオリジナル作品をほとんど作らないアニメ制作会社だ。

KAエスマ文庫系作品の『中二病』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などは、実質的にはアニメオリジナルのようなものだけれど、それでもやはり原作は小説なのである。京アニのアニメオリジナル作品は『ムント』シリーズと『たまこまーけっと』シリーズだけなのだ。

クリエイティブにおけるアニメオリジナル作品の最大のメリットは、アニメにしかできないことを追求できる点にある。

では、アニメにしかできないこととは何か。その答えはいくつかあるが『たまこラブストーリー』に関していえば、動きで魅せる心情描写が挙げられるだろう。

例えば小説の場合、地の文で登場人物の心情を具体的に描写することができる。漫画も例外ではないだろう。しかしアニメには、地の文なんてものは存在しない。もちろん、ナレーション形式で登場人物の心情を説明することはできるが、それはナンセンスだろう。

それでいくと、常盤みどりの心情が、言葉で明確に説明されることはほとんどなかった。常盤みどりが抱いていた感情は、一言で済むようなものではない。だから映像で、みどりの心情が描写されたのだ。

みどりの複雑な気持ちを描くためには、やはり鳥を南の島に飛ばすのは必須だったと言える。

京アニは動きで心情を描写できるほどの高い技術力を持つが、みどりの心情描写はその典型例だったと言える。

さいごに

それにしても、たまこがめちゃくちゃ可愛かった。ラストも、たまこが「大好き!」と言ってくれたときが最高だったし、そもそも、もち蔵に連絡網を回さなかったのがマジでエモすぎた。震えた。

残念ながら『たまこラブストーリー』の続編は発表されてないし、そもそも制作する気もないだろうし、そして僕自身、続編を望まない。あの終わり方でベストだろう。

とりあえず『たまこまーけっと』の聖地である出町桝形商店街に赴こうと思う。
→赴きました!

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