【ツルネ2期感想】やっぱり京アニはすごい、SEとカメラワークが秀逸

ツルネ -つながりの一射-
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『ツルネ -つながりの一射-(以下、ツルネ2期)』について語っていく。

『ツルネ』はKAエスマ文庫で刊行されている小説が原作で、2018年秋クールに『ツルネ1期』が放送される。そして総編集版の『劇場版ツルネ』が2022年8月に上映された後、2023年冬クールに『ツルネ2期』が放送された。

アニメ制作は京都アニメーションが担当している。

目次

『ツルネ2期』の評価

※ネタバレ注意!

作画92点
世界観・設定85点
ストーリー85点
演出89点
キャラ80点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

やっぱり京アニは凄い。登場人物の柔らかな動きはもちろんのこと、やはり実際に弓を射るシーンが素晴らしい。個人的にはカメラワークが凄いと思っていて、他のアニメ制作会社では中々見られないカメラワークが多用されていた。特に第12話『繋がりの一射』では、上から見下ろす図だったり、奥行きを活用したカメラワークだったりと、あらゆる角度での作画が描かれている。素晴らしいとしか言いようがない。

世界観・設定

高校生を主人公にした物語にありがちな「変わる・変わらない」の葛藤がテーマになっているように思う。そして、やはり念入りに弓道を取材していることがわかる。『ツルネ2期』では”斜面打起し”という射形が登場する。現代では”正面打起し”が主流らしいけれど、武士たちは”斜面打起し”だったとのこと。その中で「美しい射形だから当たるのか、それとも的に当たる射形が美しいのか」みたいなテーマがあって、これは多くのスポーツに通ずる部分があると思う。

ストーリー

『ツルネ1期』のタイトルが『風舞高校弓道部』で、『ツルネ2期』のタイトルが『つながりの一射』。ということで、風舞高校はもちろんのこと、桐先高校や、新しく登場した辻峰高校も深掘りされている。この辺の展開の仕方は『Free!』とよく似ている。

個人的には辻峰高校のエピソードが好き。辻峰高校を引っ張っている二階堂永亮の反骨心の描き方が、最高にキマッている。

演出

登場人物の感情表現は、いつも通りの京アニという感じ。そろそろ変化が欲しいところだけれど、まあクオリティが高いのは間違いない。

そして『ツルネ2期』の演出の最大の魅力は、音の使い方だ。元々『ツルネ』というタイトルは、矢を放つ時に生じる”弦音(つるね)”が由来になっている。『ツルネ2期』でも”弦音”が最大限活用されており、特に第12話『繋がりの一射』での風舞VS桐先の音の使い方が素晴らしかった。とても繊細だったので、音質の良い映画館で鑑賞したいレベル。この”弦音”のSEはどうやって作っているのだろうか。

キャラ

『ツルネ2期』では、如月七海と小野木海斗の関係性や、山之内遼平が深掘りされた。それだけでなく、桐先の藤原愁や、辻峰の二階堂永亮まで、様々なキャラが深掘りされている印象がある。『Free!』と比べてもキャラの個性が非常に強く、特に辻峰高校弓道部は、個性大爆発だ。

音楽

OP『°C』もよかったけれど、ED『ヒトミナカ』も中々に良い。イントロがとても個性的。エピソードの締めに最適だ。

『ツルネ2期』の感想

※ネタバレ注意!

強豪校と弱小校の違い

『ツルネ2期』で印象的だったのは、やはり辻峰高校。個人的に、辻峰高校の弓道のやり方がとても好きだ。型にハマることなく、的に当てることだけにフォーカスするやり方は、美しくないように見えて美しい。

しかも辻峰高校は、指導者が全くいない環境で、生徒自らが教えあうことで能力を高めている点が素晴らしいと思うし、とても共感できる。僕は中・高・大と卓球部に所属していて、しかもそれなりの強豪校だった。だから、指導者の有無でどれほどの差が出るかがよくわかる。でも実のところ、指導者に教えられたことをやるだけのチームより、指導者がいないからこそ自分たちで考え抜いたチームの方が、今後の人生で活きる力を身につけられるのではないかと思うのだ。

少なくとも風舞高校は、ある程度自分の考えを持ちつつも、やはり指導者の滝川雅貴の存在が大きい。桐先高校の指導者も、おそらく優秀であろう。

しかし辻峰高校は、自分たちで考えて、能力を高めなければいけない。それも、まともな弓道場ではなく、自作での弓道場だ。でも、こうやって自分たちで部活動をゼロから立ち上げる部活動の方が、社会におけるサバイバル能力を身につけやすいと思う。

弓道を魅せてくる京アニ

あらためて、やっぱり京アニはすごいと思う。あの放火事件以降、作品の制作ペースが落ちているけれども、クオリティが低くなることはなく、むしろ進化し続けている。

今回の『ツルネ2期』に関しては、音の使い方と、ダイナミックなカメラワークが印象的だった。まずそもそもとして、弓道をどうやって魅せていくべきかという問題がある。一回、考えてみてほしい。多分、そうそう思いつくようなものではない。

ちなみに僕は、とにかく静寂な雰囲気を作り込むのがいいと思ったけれど、それだとあまりにも玄人向けすぎる。商業アニメとして展開する以上、やはりそれなりのわかりやすさも大切だ。

その点、『ツルネ』は音に注目した。特に『ツルネ2期』は、TVアニメ1期と比べても、音の使い方のバリエーションがより広がっている気がする。また、挑戦的なカメラワークも増えた。弓道の試合を真上から撮るなんて、現実世界ではあり得ないことだろう。しかし今回の『ツルネ2期』では、真上からのカメラワークが多用されている。

正直なところ、近年はアニメ業界全体で作画のレベルが高まっているので、京アニの相対的な価値が薄れているような気がしている。けれども、今回の『ツルネ2期』の音の使い方やカメラワークを見て、他社と京アニとではまだまだ差があると感じた。弓道をここまで魅せてくれるアニメ制作会社は、そう多くないだろう。

さいごに

やっぱり京アニの作品は、素晴らしかった。正直なところ『ツルネ』は少々地味なイメージがあったけれど、それでもやっぱり凄かった。他のアニメ作品と比べても、クオリティがレベチである。

『Free!』が完結した今、京アニの女性向け作品として『ツルネ』に力を入れていくのはほぼ間違いないと思う。しかも『ツルネ』はNHKの放送枠なので、なおさら可能性は高い(NHK枠は続編制作が決定する確率が非常に高い)。

ということで、期待しておこうと思う。

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