【四畳半神話大系感想】人生の責任者は、自分自身だ!

四畳半神話大系
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『四畳半神話大系』について語っていく。

『四畳半神話大系』は、2005年に出版された小説が原作だ。そして2010年春クールにTVアニメが放送される。

アニメ制作はマッドハウスが担当し、湯浅政明が監督を務めた。

目次

『四畳半神話大系』の感想

ネタバレ注意!

言い訳などせず、未来は自分の手で掴む

『四畳半神話大系』は、主人公の”私”がバラ色のキャンパスライフを手に入れようとするも、あえなく失敗する姿をコミカルに描いた作品だ。

そして”私”は、バラ色の大学生活を送れないことを、友人?の小津のせいにする。つまり、バラ色の大学生活を送れないことを、 “私”は他人に責任転嫁しているのだ。

しかし当然のことながら、自分の人生は自分の手で切り開いていかなければならない。様々な平行世界を渡り歩き、挙げ句の果てに四畳半の部屋に閉じ込められた”私”は、やっとのことでその事実に気づく。そして目の前のチャンス……という名のヒロイン・明石さんを掴み取るのだ。

そして、大学生をテーマにしているのが実にリアルだ。僕が思うに大学生は、サークルに所属してウェイウェイ楽しんでいる人と、ただ授業を受けてバイトするだけの陰キャの2種類に分かれると思う。だから、陰キャ系の人は『四畳半神話大系』の世界観に共感しやすいのではないだろうか。

僕は大学時代、体育会に所属していたのでそれなりに充実したキャンパスライフを送ってきた。だがそれでもやっぱり、「サークルに所属してたらもっとバカみたいな生活ができたのかな……」と思い返すこともある。だから『四畳半神話大系』に強く共感できてしまった。

バラ色である必要は全くない

先ほども述べた通り、主人公の”私”はバラ色のキャンパスライフを目指していた。しかし、充実したキャンパスライフは、必ずしもバラ色である必要はない。四畳半の部屋に閉じ込められることで、”私”はその事実にやっと気づくことができた。

たしかに、映画サークル「みそぎ」で先輩を見返すためのアホみたいなドキュメンタリー映画を制作したり、8回生の樋口師匠の弟子になって代理戦争に巻き込まれたり、秘密機関『福猫商店』の幹部に上り詰めたりする日々は、決してバラ色ではないものの、とても充実したキャンパスライフだといえる。少なくとも僕は、そんなキャンパスライフを送ってみたいし、そんな個性あふれるサークルが集う大学に通ってみたいとも思う。

人生とは、実に様々であり、カラフルである。

世界の僻地まで旅してみたり、家に引きこもってひたすらアニメ・ラノベを嗜んだり、会社員で仕事終わりのビールを楽しみにしたり、それはそれで十分すぎるぐらいに充実しているではないか。

それを自覚できてから、本当の人生が始まるのだと思う。そんなことを『四畳半神話大系』で感じさせられた。

視聴体験が最高すぎる

『四畳半神話大系』の最大の特徴は、言うまでもなく湯浅監督が作り出す世界観にある。

おそらく、『四畳半神話大系』の原作小説自体が非常に個性的な文体なのだと思う。そしてそれを忠実に再現するために、語り手である”私”の地の文が、アニメの脚本に多く導入されている。それをさらに声優の浅沼晋太郎が味のある声質で読み上げ、それに合わせて湯浅監督の独特の画で演出する。

僕はこんな感じの、原作小説の文学的な要素を全面に押し出したアニメ作品が大好きだ。『四畳半神話大系』からは、『物語シリーズ』と同じようなものを感じる。

『四畳半神話大系』の評価

作画90点
世界観・設定90点
ストーリー90点
演出90点
キャラ90点
音楽80点

作画

湯浅作品ということで、芸術的な作画だった。それが作品の雰囲気とマッチしている。最高の視聴体験だった。

世界観・設定

タイムリープとか平行世界とか、その類の世界観だ。しかし、他の同様の作品と比べても、よく作り込まれた世界観だと思う。そしてやはり、湯浅監督が作り出す雰囲気が素晴らしい。実際に京都に訪れてみたくなった。

ストーリー

1話ごとに平行世界が変わっていくという構成が面白い。しかもその平行世界は、主人公がどのサークルを選ぶのかで大きく変わってくるのだ。面白くないわけがない。

それに終盤の展開も個人的に好み。伏線が綺麗に回収されたと思う。

演出

湯浅監督らしい演出だった。アニメにしかできない表現が追求されている。

時としてそれは、矛盾点も生み出す(普通の人間にはできない動きとか)。だが、それを含めてアニメーション表現なのだと思う。現実世界ってわけじゃないんだから、別に矛盾点があってもいいのだ。

キャラ

『四畳半神話大系』はキャラクターの個性が非常に強い。個性……というよりは癖だな。本当にどのキャラクターも癖が強い性格となっている。

また、原作のイラストを担当している中村佑介が描く独特なキャラクターを、しっかりアニメーションで動かしている湯浅監督の技量も窺える。そしてなんといっても、明石さんがめちゃ可愛い!

音楽

OPの『迷子犬と雨のビート』とEDの『神様のいうとおり』はどちらも良曲。間違いなく万人受けしないが、質自体は高いと思う。

さいごに

『四畳半神話大系』の個性的なキャラクターたちが登場する『四畳半タイムマシンブルース』もぜひ視聴してみてほしい。個人的には、2022年に公開されたアニメ映画の中で一番好きな作品だ。

それと、原作小説も手に取ってみていいかもしれない。コミカルな文体が癖になるはずだ。

四畳半神話大系 (角川文庫)
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