今回は『SPY×FAMILY』について語っていく。
『SPY×FAMILY』は2019年より『週刊少年ジャンプ+』で連載されているWeb漫画だ。そして2022年春クールに前半クール、2022年秋クールに後半クールで、TVアニメ1期が放送された。
アニメ制作はWIT STUDIOとCloverWorksが担当した。
『SPY×FAMILY』の評価
ネタバレ注意!
作画 | 89点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 85点 |
音楽 | 85点 |
作画
作画のクオリティは非常に高い。アクションシーンはもちろんのこと、日常シーンの作画も中々仕上がっている。ただし全体的に落ち着いたストーリーということもあり、派手なシーンは特になかった。同クールで『チェンソーマン』などの高クオリティ作品が放送されていたこともあり、『SPY×FAMILY』の作画は影が少々薄かった。
世界観・設定
スパイと暗殺者と超能力者が疑似家族になるというテーマ。面白くないわけがない。この辺の企画力は流石ジャンプという感じだ。
今後の日本の家族間を左右するテーマ性だと個人的に考えていて、そういった意味でもポテンシャルのある世界観だと思う。
ストーリー
前半クールはシリアス多めで、後半クールは日常系みたいな感じになった。特に日常系のシナリオは、ジャンプにしては珍しい展開だ。とはいえ普通に面白かったし、個人的には後半クールのストーリーの方が好きだった。
演出
アーニャの可愛さを引き立てた演出は高評価だ。おかげさまで日本中のライトアニヲタがアーニャの虜になった。
それに、なんだかんだで世界観に没入しやすい設計になっていたと思う。
キャラ
『SPY×FAMILY』の最大の特徴はキャラだ。3人の家族がそれぞれスパイ・暗殺者・超能力者であるため、その時点で個性が非常に強い。特にアーニャの人気ぶりは異常で、これまでロリを揶揄してきたと思われる大衆も、皆んなアーニャの虜になった。
実際、「アーニャ可愛い」というのはロリ発言だと解釈されても全くおかしくない。けれどもそういった意見はほとんど出てこなかった。
音楽
『SPY×FAMILY』は音楽にとても力が入っている。OPには髭男とBUMP OF CHICKEN、EDには星野源とyamaが起用されている。僕はこういったJ-POPアーティストの起用があまり好きではないけれど、それなりに新しさを感じたのでそんなに不満はない。
特にyamaの『色彩』は素晴らしい出来だった。アニメーションの出来の良さも相まって、『SPY×FAMILY』の楽曲の中で最も良くできた楽曲だと思う。
『SPY×FAMILY』の感想
成功が約束されたアニメ
近年放送されたアニメの中で、これほどまで”成功が約束されたアニメ”があっただろうか。
原作漫画はアニメ放送決定前から『次にくるマンガ大賞』や『このマンガがすごい!』などのグランプリのランキング1位を記録。2021年6月に『ジャンプ+』発作品初めてとなるシリーズ累計発行部数1,000万部を記録し、『ジャンプ+』の看板作品にまで上り詰めた。
そしてアニメ化が決まると、最も勢いのあるアニメスタジオの一つであるWIT STUDIOとCloverWorksの共同制作であることが報じられる。
ちなみに当時のCloverWorksは『約ネバ2期』の批判が強い時期だった。だが『SPY×FAMILY』の前クールである2022年冬クールに『明日ちゃんのセーラー服』と『着せ恋』が放送され、信頼を取り戻すどころか一気に注目されるようになる。その流れで『SPY×FAMILY』が放送された。
そして案の定『SPY×FAMILY』はアニメでも大ヒット。超有名アーティストを起用するし、プロモーションにも力を入れるしで、多くの人々が『SPY×FAMILY』を視聴することになる。
これはアニプレックスとしてはウハウハという感じだろう。しかも『SPY×FAMILY』は中長期的なプロジェクトとして進められているようなので、当分はアニプレックス(というかソニー)の安定した収益源になりそうである。
ポテンシャルが凄まじいアニメだが……
僕は、テクノロジーの進化や社会動向の衝撃的な変化によって、様々なコトが流動化すると思っている。その一つが”家族”だ。
家族が流動化するようになるとどんな世界になるのか、具体的に説明する能力が僕にはない。
ただ、抽象的には説明できる。事実婚が増え、養子制度が日本でもより普及するようになるのだ。別にDNAという意味で血が繋がっている必要はない。お互いが家族だと思えれば、それで家族になる時代が本当の意味で到来すると僕は考えている。
では『SPY×FAMILY』はどうだろうか。スパイ、暗殺者、超能力者という設定が強烈すぎて見逃しがちだが、3人は疑似家族なのである。ロイドとヨルとアーニャはお互いの利益のために偽りの家族を演じているのだ。
そして順当にストーリーが進めば、この3人は次第に愛情を抱くようになり(というかヨルとアーニャは既に抱いている)、本当の家族になっていくのだと思う。それは日本中の人々の家族観を一変させる可能性があり、家族の流動化が加速するエンジンとして機能するようになる。そんなポテンシャルが『SPY×FAMILY』にはあるのだ。
ただし色々と『SPY×FAMILY』について調べていくと、どうやら原作者の遠藤達哉先生は『SPY×FAMILY』に思い入れがなく、敏腕編集者である林士平の言う通りにしている感じなのだそうだ。だから今後も『SPY×FAMILY』が売れていくのは間違いだろう。だが、人々の家族観を変える作品になるかどうかはわからない。
『SPY×FAMILY』のポテンシャルを本当の意味で発揮できるかどうかは、編集者サイドの判断に委ねられそうだ。『SPY×FAMILY』が”大ヒットしただけの作品”で終わるのか。それとも”人生を変える作品”で終わるのか。今後の動向を見守っていきたいと思う。
さいごに
『SPY×FAMILY』は2023年のTVアニメ2期の放送と、劇場版の制作が決定されている。これでも大ヒットを記録することができれば、完結までアニメ化が続く可能性が出てくるだろう。
もちろん僕も、『SPY×FAMILY』を今後も視聴していくつもりだ。