【心が叫びたがってるんだ。感想】超平和バスターズは超実力派

心が叫びたがってるんだ。
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『心が叫びたがってるんだ。(以下、ここさけ)』について語っていく。

『ここさけ』は、『あの花』のメインスタッフである超平和バスターズが再集結して制作されたアニメ映画で、2015年9月に上映された。アニメ制作はA-1 Picturesが担当している。

超平和バスターズは長井龍雪(監督)・岡田麿里(脚本)・田中将賀(キャラクターデザイン・総作画監督)の3人からなるアニメ制作チーム。『あの花』が有名だが、この3人が初めてメインスタッフとして集結した作品は『とらドラ!』だ。

目次

『ここさけ』の評価

※ネタバレ注意!

作画85点
世界観・設定80点
ストーリー85点
演出83点
キャラ80点
音楽88点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティは非常に高い。”萌え”が特別強いわけではなく、細かい部分の動きで登場人物の心情をしっかり表現している。それながらもちょっとだけ「可愛い」と思わせる描写があり、特に主人公の成瀬順の動きは可愛らしい。このバランス感覚がめちゃくちゃ良かった。

世界観・設定

「言葉の力」がテーマになっている。また、成瀬順の「声が出ない症状」は吃音症の見方もできるだろう。そしてこれらのテーマを青春劇に押し込み、かつ”地域交流会のミュージカル”という何とも言えないイベントを採用したのが良い。

ストーリー

ストーリーのクオリティも極めて高く、あっという間に感じられた。119分の中に成瀬順の家族問題、野球部の問題、ミュージカル問題、そして恋愛劇というように様々なエピソードが描かれたけれど、どれも丁寧に描写しながら効率よく尺を埋めていたと思う。

演出

キャラの動きの演出は言わずもがな。主人公の成瀬順の可愛らしさはよく演出できていたと思う。

個人的には声優の使い方が上手いなぁと感じる。成瀬順が突然歌い始めるシーンはどれも印象的だったし、坂上拓実がピアノ語りするシーンも良き。そしてミュージカルの演出も素晴らしかった。

キャラ

キャラはなんだかんだで個性的だったよなぁと思う。『あの花』の頃とは異なり、髪色は全体的に落ち着いている。だけれど、メインキャラだけでなくサブキャラの見分けも付いてしまう。こればかりは不思議だった。

音楽

主題歌は乃木坂46の『今、話したい誰かがいる』だ。なんだかんだで秋元康楽曲は良曲なんだよな……。

そして『ここさけ』の魅力は、やはりクラシック音楽の使い方だろう。こればかりは音楽を担当したミトのセンスの良さを感じる。ミュージカルで2つの楽曲を同時に歌う演出とか、知らなかったなぁ。『Over the Rainbow』と『悲愴』のマッチは抜群。

『ここさけ』の感想

※ネタバレ注意!

超平和バスターズは、やはり超実力派だった

『ここさけ』は、”超実力派の作品”という印象を抱いた。特別個性が強いわけではないのだけれど、丁寧な描写と緻密なシナリオという正攻法で、作品のクオリティを押し上げている。それでいて萌えとリアルのバランスもちょうどよく、現代アニメ好きにも大衆にもウケる作品だった。

もちろんこれは、超平和バスターズの純粋な実力ということだろう。『とらドラ!』から始まり、『あの花』で名を挙げた後での『ここさけ』だ。ただ『ここさけ』は、『とらドラ!』や『あの花』に比べると萌え要素が薄いし、リアリティも増しているような気がする。また、感動ポルノと呼ばれるようなお涙頂戴の演出も抑えめになっていて、この辺の塩梅もちょうど良い。

そもそも超平和バスターズは、単体でも強力な効果を及ぼすクリエイターが3人集結してしまっている。しかも相性は抜群。やはり超平和バスターズは超実力派のアニメ制作チームだった。

言葉で傷ついた世界は、思ったよりも美しい

『ここさけ』は、かなりメッセージ性の強い作品だったと思う。これを全て汲み取ろうとするとすごく難解のように思えるが、それは全てラストシーンにギュッと詰め込まれている。

玉子の中には何がある。

いろんな気持ちを閉じ込めて。

閉じ込めきれなくなって、

爆発して、

そして生まれた、その世界は、

思ったより、綺麗なんだ

『心が叫びたがってるんだ。』より引用

真っ直ぐな言葉は時として誰かを傷つける。とても分かりやすい例は恋愛だ。恋愛も告白する前が一番楽しいというけれど、それは痛みがないからだ。告白として自分の気持ちを言葉でまっすぐ伝える時に、初めて痛みが伴う。

しかし、ちゃんと真っ直ぐ言葉を伝えることができた後の世界は、思ったよりも綺麗だった。それが『ここさけ』が示したいメッセージなのだと思う。

この”真っ直ぐ言葉を伝える”というのは、可能であればちゃんと対面して伝えるべきで、陰口やSNSの匿名口撃はNG。ただ『ここさけ』がオシャレなのは、言葉(というか気持ち)を伝える際に歌を通してもいいとしている部分だ。むしろ歌とか手紙とか小説とかミュージカルで気持ちを伝えた方が、気持ちを伝える側としては多少は気が楽になるし、受け取る側の感動も凄まじいだろう。

それに何といっても、そんな気持ちの伝え方はオシャレで素敵だ。

さいごに

久しぶりに実力派の作品を視聴した。ここ最近は『物語シリーズ』や『まどマギ』のような、シャフトの超個性派作品に浸っていたから、なおさら『ここさけ』が新鮮に見えた。思えばここ最近のアニメは、やはり個性が強すぎるし、萌え要素も強すぎる。だから『ここさけ』みたいな作品は、むしろ希少種みたいな感じになっているのだと思う。……まあ、『ここさけ』は2015年のアニメなのだけれど。

とりあえず次は、超平和バスターズの次作『空の青さを知る人よ』を視聴したいと思う。でもU-NEXTでしか見れないのが難点(2023年2月10日時点)。ただPrime Videoであれば800円ぐらいでレンタルできるから、ちょっと高いけど、このまま勢いで視聴してしまおうと思う。

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