山田尚子監督の色が凝縮されたアニメ

たまこまーけっと
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今週は『たまこまーけっと』について語っていく。

『たまこまーけっと』は京都アニメーションによるアニメオリジナル作品で、2013年冬クールに放送された。監督は山田尚子で、メインスタッフは『けいおん!』のメンバーが名を連ねている。

目次

『たまこまーけっと』の評価

※ネタバレ注意!

作画88点
世界観・設定85点
ストーリー85点
演出85点
キャラ84点
音楽80点
※個人的な評価です

作画

山田尚子って感じの作画だった。女の子の柔らかさとか、ちょっと芋っぽいところとか。それに足だけを捉えるカットも印象的。メインスタッフが『けいおん!』のメンバーということもあって、本当に『けいおん!』みたい。

世界観・設定

商店街を舞台にした設定。日常系としても京アニとしても相性が良い。また、100%萌え萌え日常系というわけでもなく、恋愛パートがあったり、ちょっとした葛藤が描かれたり。まあこれも京アニって感じがする。

ストーリー

1年間を1クールで描いているので、ストーリーのテンポ感はかなり早いと思う。また、基本的に1話完結型なのも幸いして、サクサク視聴できる。

演出

演出も山田尚子って感じがする。個人的に印象に残っているのが、たまこが寂れた商店街を見て母親がいなくなった時をちょっとだけ思い出すシーン。カットの使い方が絶妙だった。

あと第8話『ニワトリだとは言わせねぇ』の演出が印象的。それで誰が演出をやっているか調べてみたら、このエピソードだけ武本康弘が担当していた。やっぱり優れたアニメーターだったんだなぁと感じる。

キャラ

たまこが癖になる。『けいおん!』の唯ちゃんみたいな感じ。それと常盤みどりの複雑性や、牧野かんなのシュールのあ雰囲気もかなり強烈だ。個人的に、みどりの描き方は女性にしかできないものだと思う。

そしてそこに入ってくるのが鳥(デラ・モチマッヅィ)。やっぱり鳥の存在が『たまこまーけっと』の世界観を一気にグレードアップさせているように感じる。

音楽

山田尚子監督は音楽が大好き。ということで中々渋い楽曲が挿入歌として用いられている。

また、OP『ドラマチックマーケットライド』とED『ねぐせ』も中毒性が高い。

『たまこまーけっと』の感想

※ネタバレ注意!

変わるor変わらないがテーマ

京アニは高校生の青春を描くことが多い。そして高校生の青春を描く上で欠かせないテーマが「変わるor変わらない」というものだ。

高校生というのは、卒業や進路のタイミングに合わせて、選択を迫られる。例えば田舎の住んでいる人が、高校卒業と同時に都会に出ていくのは「変わる」の選択。逆に、そのまま田舎に住み続ける選択を取ることは「変わらない」の選択だと、概ね言える。

典型的な例を挙げるなら、周りの目を気にせずに本気で南極に行こうとする『宇宙よりも遠い場所』は、紛れもなく「変わる」の選択を取った作品だ。このように「変わる」の選択を重視する作品は、総じて自己啓発的で、勇気をもらえることが多い。

一方「変わらない」の選択を重視する作品が悪いのかと言うと、全くそんなことはない。「変わらない」ということは過去と今を大切にすることであり、そこにはアットホームの温かさが生まれる。

『たまこまーけっと』は商店街を舞台にした作品だ。商店街は現代においては、昭和の産物。まさに「変わらないもの」の典型例だと言える。一般的に多くの商店街は、スーパーマーケットや通販の登場で寂れていることが多いが、どうやらうさぎ山商店街は未だに賑わいを見せているらしい。そしてたまこは、そんな商店街が大好きだった。

だがここに、とんでもない外圧が登場する。鳥だ。やがて、この鳥がきっかけで「たまこがお姫様になる!」という事態に発展してしまい、そこでたまこ達は「変化」について考えることになる。

結局、最終的には無事にトラブルも解決し、たまこたちが変わることはなかった。しかし、たまこたちの卒業は着々と迫る。変わるのか、それとも変わらないのか。いよいよその選択が迫られるのが『たまこラブストーリー』なのだろう。

ということで『たまこラブストーリー』がめちゃくちゃ楽しみである。

山田尚子の色が凝縮された作品

Wikipediaを読む限りでの山田尚子の情報は、ザッとこんな感じだと思う。

  • 天才アニメ女性監督
  • 繊細な心情描写が強み
  • 音楽が趣味
  • 脚を使った演出が印象的
  • 青春の描き方が秀逸

そして『たまこまーけっと』は、上記の山田尚子の強みがグッと凝縮された作品だと感じる。

特に、個人的に印象に残っているのがレコードだ。どうやら山田尚子はレコード屋に通い詰めていた時期があったらしく、その体験が『たまこまーけっと』に生かされているのは間違いない。

それと常盤みどりの描き方も、印象に残っている。一般的に、アニメで恋愛パートが描かれる際は、とても単純に描かれることが多い。「あぁ、このキャラはあいつのことが好きなのか」と。

しかし常盤みどりは、そこまで単純じゃないし、それどころかかなり複雑である。

こういうのは、やはり女心を理解できる女性にしか描けないものなのではないかと僕は思う。そういう意味でも山田尚子らしいなぁと思ってしまうのだ。

さいごに

『たまこまーけっと』の次は、続編である『たまこラブストーリー』が待っている。ついに、たまこが一皮剥けるときが来るらしい。面白くならないわけがない。すぐさまにでも視聴して、感想記事を書こうと思う。

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