【映画中二病感想】過去の京アニ作品が舞台に!

星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-(以下、映画中二病)』について語っていく。

『中二病』はKAエスマ文庫で刊行されている小説が原作で、2012年秋クールにTVアニメ1期、2014年冬クールにTVアニメ2期が放送された。そして2018年に『映画中二病』が公開される。

アニメ制作は京都アニメーションが担当した。

目次

『映画中二病』の評価

※ネタバレ注意!

作画88点
世界観・設定83点
ストーリー85点
演出85点
キャラ88点
音楽83点
※個人的な評価です

作画

TVアニメ1期が2012年放送で、この頃から「あ、これは京アニだ」とわかるキャラデザになっていった。そして2018年でも、それがしっかり継承されていた。『映画中二病』は戦闘シーン(?)の描写が多くて相当にカロリーがあったと思うけど、さすが京アニという感じ。

世界観・設定

六花と勇太の逃避行が描かれる。その中で、京アニ作品の舞台になった場所が多数登場した。京都は『たまこまーけっと』、兵庫は『ハルヒ』、和歌山は『AIR』、北海道は『Kanon』、青森は『CLANNAD』だ。個人的にはKey作品の舞台が出たのが嬉しい。京アニファンからしたらたまらないだろうな。

ストーリー

高校3年生になる前の春休みということで、やはり「変わる・変わらない」のくだりになった。六花にとって”中二病であること“はアイデンティティだったわけだけれど、個性を重視する必要なんてない。勇太の特別になれれば、それで十分なのである。

やたらと個性を重視する現代社会に刺さるストーリーかも。

演出

キャラがとても可愛らしく描かれているのは相変わらず。さすが京アニだ。ラストで『Sparkling Daydream』を挿入するのも激アツ。

一方で、”映画館だからできる演出”をもう少し見たかった気持ちもある。

キャラ

六花の姉である十花も含めて、主要人物が満遍なく活躍していた。特に、凸守と丹生谷のペアリングがめちゃくちゃ見れたのが最高だった。十花の弄り方もたまらない。『中二病』はやっぱりキャラが強いなぁと思った。

音楽

挿入歌の『Please, Take on me♡』が個人的にいい感じ。エレクトロ要素が強いシティポップ風な楽曲だった。

主題歌の『こころのなまえ』は六花の勇太に対する気持ちが込められた楽曲だった。中二病をこじらせた六花だけれど、結局は勇太との出会いでもっと強くなれたのだなぁと思う。

『映画中二病』の感想

※ネタバレ注意!

変わる変わらないのアンサーは?

京アニは高3の葛藤を描く作品が多く、『映画中二病』も例外ではなかった。六花の中二病を心配した十花が「イタリアに連れていく」と言い出し、発破をかけるのである。そこで勇太と六花は、十花から逃げる形で、日本中を巡りながら、自分たちの関係性を見つめ直していくことになる。特に六花は、勇太に指輪をもらった段階で、自分の力(中二病、つまり個性)が失われていくことに気づき、変わることに対して怖くなっていく。

この辺の葛藤は、七宮のエピソードでも描かれた。ただし決定的に違うのは、七宮は自分の力で乗り越えたのに対して、六花は勇太の支えがある前提で乗り越えようとしていたことだ。終盤になって、七宮は六花のやり方に対して否定的だったが、そこはくみん先輩がカバーする。最終的に勇太と六花は「中二病でも恋がしたい!」というアンサーを出した。

さて、『映画中二病』では結局のところ「変わる、変わらない」のアンサーが出たのだろうか。答えはNoだ。ただし、勇太と六花は「中二病でも恋がしたい!」というメッセージにある通り、それなりに割り切ることはできたのだと思う。あの終わり方を見るに、多分、六花はいずれ中二病を卒業することになるのだろう。でもそのときは、きっと勇太がそばにいるはずだ。

もし勇太が「中二病か俺かどっちか選べ!」みたいな選択を六花に迫ったら、それなりにシリアスになると思うけど、『中二病』はエンタメ重視な作品なので、そんな泥沼展開になることはなかった。そして何よりも、勇太はそんな酷な選択を六花にさせるような男ではない。

『中二病』は、”中二病”という一見するとネタみたいな設定に対する深掘りが秀逸な作品だったと思う。この第一印象は最後の最後まで変わることはなかった。

凸守とモリサマーのが良い!

終始、凸守とモリサマちゃんの駆け引きが面白かった。『映画中二病』では、勇太と六花が逃避行を繰り広げる裏側で、凸守とモリサマちゃんの追跡も描かれたのだ。やはり、この2人のペアリングには一定の需要があるのだろう。『映画 けいおん!』のあずにゃんと唯ちゃんの関係性が深掘りされたように、京アニの劇場作品は、TVアニメに比べてちょっと攻めた感じでペアリングを強調してくる。まあこれもファンサービスということなのだろう。

『映画中二病』を鑑賞して、『中二病』はやっぱりキャラが強いと感じた。特にアニメオリジナルキャラの凸守とくみん先輩が中々強烈だ。この2人のキャラが、モリサマちゃんの味を引き出している。そもそも、この「モリサマちゃん」という愛称も、くみん先輩が言い始めたものだった。

以上のことから、ストーリーの大筋に関しては、それなりに真剣に議論したのだろうが、1つ1つのシナリオに関してはキャラクターを動かす形で作られたのだと思う。じゃないと「モリサマちゃん」といういかにもくみん先輩が名づけそうな愛称は出てこないだろう。

そう考えると、京アニはなんだかんだでキャラクターを作り込み、それを動かすのが上手いんだなぁと思う。

さいごに

あの終わり方を見るに『映画中二病』の続編が制作されることは、もうないと思う。凸守とくみん先輩が出ないので、多分、原作小説を購入することもないだろう。

それにしても『中二病』シリーズは、KAエスマ文庫初めての作品ということで、絶対に成功しなければならない作品だったと思う。それでいくと『中二病』は、その役目を十分に全うしたと言えるだろう。

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