【響け!ユーフォニアム(TVアニメ1期)感想】ポニテ先輩と麗奈の破壊力

響け♩ ユーフォニアム

今回は『響け!ユーフォニアム』のTVアニメ1期(以下、ユーフォ1期)について語っていく。

『響け!ユーフォニアム』は武田綾乃先生による小説が原作で、2013年から宝島社にて刊行されている。

そして2015年春クールに『ユーフォ1期』が放送される。アニメ制作は京都アニメーションが担当した。

目次

『ユーフォ1期』の評価

※ネタバレ注意!

作画90点
世界観・設定85点
ストーリー88点
演出90点
キャラ90点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

京アニクオリティ。『ユーフォ1期』は吹奏楽部がテーマということで、指の動きや息遣いの表現が肝だった。おそらくかなり制作難易度の高い動きだが、ここは流石京アニ。しっかり表現していた。

また、とにかく女の子が可愛らしい。これも流石京アニという感じ。正社員で雇用できるからこそ、ノウハウが蓄積し続けている。

世界観・設定

『ユーフォ1期』は吹奏楽を舞台にした物語。「音楽×JK」なので、やはり『けいおん!』を想起させる世界観だ。当然京アニもそれを理解していて、『けいおん!』の良いところを踏襲しながらも、『けいおん!』とは違った魅力を作り出そうとしている。

具体的には、音楽の難しさを丁寧に描いている点が挙げられるだろう。『けいおん!』では、そういった苦しいシーンは意図的に省かれていたが、『ユーフォ1期』に関しては逆に強調していたぐらいである。

また、吹奏楽部特有の課題や雰囲気も丁寧に描かれていて、しっかり取材していることがよくわかる。

ストーリー

京アニ作品は大抵の場合、序盤の盛り上がりに欠けるのだけれど、中盤ぐらいからガッチリハマってしまう。個人的に『ユーフォ1期』でも同じ印象を受けた。序盤はちょっと微妙だったけれど、3話あたりから面白くなる感じ。そして最終的にめちゃくちゃハマってしまう。

先ほども述べた通り『ユーフォ1期』は、音楽における”苦しい場面”が強調されていた。実際、ほとんどのエピソードがシリアス展開で、ゆるふわ日常パートの割合は小さい。

また、基本的に「次回が気になる終わり方」でエピソードが締め括られているので、どんどん次のエピソードを視聴したくなる仕組みになっていた。

演出

演出がめちゃくちゃいい。個人的には、登場人物の動きが想像以上に良かった。

一方の演奏シーンは、良くも悪くも期待値通りという感じだ。たしかに演奏シーンは感動するけれど、わりとありきたりの演出だった。とはいえ、やはり丁寧に描かれていて、特に音響の部分は色々と試行錯誤したのだと思う。あとはカメラワークがもっと斬新だったら最高だった。OP映像ぐらいのカメラワークが欲しい。

キャラ

『響け!ユーフォニアム』という作品の最大の特徴は、キャラにあると思う。個人的に「ヤバい!」と思ったのが高坂麗奈と中川夏希だ。主人公の黄前久美子も良いキャラだけれど、やはりこの2人が異次元である。

高坂麗奈は、まさに魔性の女という感じ。『ユーフォ1期』では久美子との百合展開が描かれるのだけれど、その際の描写が飛び抜けている。

そして何といっても中川夏希。僕は夏希先輩のようなキャラを、他の作品で全く見たことがない。これは一体何属性なのだろう。それに、時折見せる笑顔の表情がちょっと凄すぎる。

最近だと『リコリコ』のキャラが凄いと思ったけれど、多分、この『響け!ユーフォニアム』からある程度のエッセンスを得ていると個人的に推察する。実際、高坂麗奈は井ノ上たきなと丸かぶりのキャラだし、千束と同じ声優だし。

音楽

OPの『DREAM SOLISTER』が非常に印象的。吹奏楽がテーマなので、当たり前だけれど金管楽器や木管楽器の音が使われている。またEDの『トゥッティ!』も同様の印象を抱いた。そして『けいおん!』を強く意識しているのがわかる。

それと、やはり有名な吹奏楽曲を挿入歌として利用できるのが強い。

あとは音楽アニメということで、音響もこだわりも随所で見られた。特にコンサートホールに移動してからの音声加工がとても丁寧。こういうところがとても京アニらしい。

『ユーフォ1期』の感想

※ネタバレ注意!

中途半端な部活動に送るメッセージ

『ユーフォ1期』の序盤におけるキーパーソンの1人は滝先生だ。吹奏楽部の新顧問になったということで、吹奏楽部の動きを決定づけているし、それはすなわち、ストーリーを作り出しているキャラと言っても過言ではない。

そんな滝先生がまず始めたのが、目標設定だ。僕もそれなりの強豪校に所属していたからわかるのだけれど、部活動の目標設定ほど曖昧なものはない。おそらく弱小の部活動は「県大会出場」を目標にするのだが、ちょっと強豪になると「とりあえず全国」という目標設定をしがちである。

まあ高い目標を設定するのは悪いことではない。問題は、実際に目標達成のために真剣に取り組んでいるかどうかという点に尽きる。大抵の場合は「No」だ。「全国大会出場」を目標にしながらも、全国大会に出場するための取り組みを実施できていないのがほとんどである。そして北宇治高校吹奏楽部も、同じ状況に陥っていた。

そんななか、心の底から全国大会に出場する気満々の滝先生と高坂麗奈の登場で、部の雰囲気が変わっていく……。

では、一体ここから何を学べるのか。

それは、目標達成のためには「空気からの脱却」が必要ということである。

「特別」になる方法

空気からの脱却。それは「特別」になる方法である。

言わずもがな『ユーフォ1期』のテーマの1つが「特別」だ。高坂麗奈は(おそらく)滝先生へのアプローチの一環として、自分自身が特別になることを強く望んでいる。そのために彼女は周囲の目線を極力排除し、自分が正しいと思った道を突き進もうとしているのだ。

そう考えると「吹奏楽部」という舞台設定は、「特別」と非常に親和性が高い。平均的にこれほどの人数を抱える部活動は、吹奏楽部の他にほとんど存在しないだろう。だからこそ「空気」がより強く感じられる環境でもある。しかも個人競技がほとんど存在しないため、否が応でも周りに合わせがちになってしまう。そんな状況の中で「空気からの脱却」を実行しようとするのは勇者以外の何者でもない。

これが『響け!ユーフォニアム』が最もやりたいことの1つなのだと思う。どう考えても『響け!ユーフォニアム』は、京アニ作品の中でも登場人物が圧倒的に多い。それもこれも「空気」と「特別」を明確に描こうとしているからだと思う。

斎藤葵の存在が大きい

『響け!ユーフォニアム』のメインテーマは「空気と特別」だと思うが、具体的にどのキャラクターが「特別」を目指しているのだろうか。

まず多くのキャラが言うように、3年生の副部長・低音パートのパートリーダーである田中あすかは「特別な人間」なのだろう。実際に本人がどう思っているかはまだ明らかになっていないが、確かに田中あすかは別格な存在である。

それに大多数の「空気」から見れば、滝先生や高坂麗奈も既に「特別」だと思う。本人たちは満足していない様子だが「特別」を目指している時点で既に「特別」なのだということは、多くの青春アニメ作品で描かれてきたことだ。

そしてこれに続くのが我らが主人公・黄前久美子である。あすか先輩が久美子を”少しだけ”認めていたり、久美子自身が麗奈から影響を受け続けていたりしていることで、久美子も「特別」になろうとしている。それ以外にも夏希先輩など「特別」を目指そうとしている「空気」は多数存在する。

そして何といっても、個人的に見過ごせないのが斎藤葵だ。葵ちゃんは久美子の幼馴染であり「なんとなくの全国大会出場」という目標に嫌気がさし、早々に退部を決めた3年生である。

先ほど僕は「目標達成のためには空気からの脱却が必要」と述べた。それでいくと、葵ちゃんも志望校合格という「目標達成」のために、退部という名の「空気からの脱却」を実践したキャラなのだ。たしかに吹奏楽部目線だと、葵ちゃんからはネガティブな印象を抱きがちになる。しかしこれも、立派な「空気からの脱却」なのである。

「空気からの脱却」は大抵の場合、組織全体に嫌な雰囲気をもたらしてしまいがちだ。しかしそれに打ち勝ってこそ、初めて「特別」になれるのである。

好きなことは、そんなのでいい

第十二回『わたしのユーフォニアム』では、コンクール直前に黄前久美子が挫折しかけるエピソードが描かれた。当時の久美子は、とにかくユーフォニアムに夢中になっていた。真夏の日差しの中、水を一切飲まずに練習に打ち込んでいる姿が、それを証明している。とにかく久美子は、ユーフォニアムに夢中になっていたのである。

しかし、例外なく滝先生は容赦がない。「コンクールに間に合わない」と判断し、久美子のチャレンジをたった一言で無に帰してしまう。それで久美子はメンタルに大ダメージを受けることに。そこで初めて、中3の時の麗奈の気持ちがわかったのだ。

そのあと、久美子の姉・黄前麻美子とちょっとした喧嘩になり「音大行くつもりないのに、吹部続けて何か意味あるの!?」と言われる。そのとき久美子は「わたし、ユーフォ好きだもん!」と言うのだが、そこで自分がユーフォニアムが大好きなことに気づくのである。

極め付けは学校で忘れ物のスマートフォンを回収するシーン。滝先生の以下のセリフで、久美子は「自分の好きなこと」に対する考え方で確証を得ることになる。

父と同じ仕事に就きたいなんて思ったこともなかったのですが、でも選んだのは、この仕事でした。

結局、好きなことって、そういうものなのかもしれません。

『響け!ユーフォニアム』より引用

つまり、将来のことを考えていなくても、なんだかんだで好きなことに行き着いてしまうということなのである。だから未来を無理に考える必要などない。今、好きなことだけやっていればいい。結局好きなことに行き着いてしまうのだから、好きなことを続けることに、意味がないわけないのである。

……こういうのを描こうとするのも、『けいおん!』を制作した京アニらしいなぁと思う。僕はこういう作品が、超が付くほど大好きだ。

さいごに

とにかく続きを視聴したい。久しぶりに僕が個人的にハマれそうな作品を見つけた感じである。

なんとなーく『響け!ユーフォニアム』からは地味な印象があったのだけれど、全然そんなことはなかった。キャラがとにかく良い。「もしかしたら京アニ作品の中で最もキャラが強い作品かもしれない」と思わされたほどだ。

個人的には夏希先輩が気になる。あの夏希先輩は、一体どこに向かっていくのか。とにかく気になる……。

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