【キルラキル感想】服を着るか、服に着られるか

キルラキル

今回は『キルラキル』について語っていく。

『キルラキル』はTRIGGER制作によるアニメオリジナル作品で、2013年秋クールから2クールにかけて放送された。

また、TRIGGERにとっては『キルラキル』が初めてのTVアニメ元請作品となった。

目次

『キルラキル』の評価

※ネタバレ注意!

作画92点
世界観・設定90点
ストーリー87点
演出90点
キャラ90点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

『グレンラガン』を彷彿とさせるレトロ風な作画と豪快な戦闘シーン。それでいて3DCGなどのデジタル技術を用いた派手な作画がTRIGGERらしい。Wikipediaにも書いてあったけれど、日本式アニメの特徴であるリミテッドアニメーションだからこそできる作画が多用されていた。特に満艦飾マコと針目縫の作画が最高すぎる。

世界観・設定

『キルラキル』の「キル」には「着る」と「斬る」と「KILL」の意味が含まれていると考えられる。特に「着る」に対する考え方、つまり「服」に対する考え方が非常に面白い。服を着るのか、服に着られるのか。非常に面白い視点だ。

これを激アツ学園バトルものに組み込むセンスも素晴らしい。

ストーリー

一応、伏線が意識された理屈っぽいストーリーにはなっているけれど、シナリオ自体はとにかく勢いで押している感じだ。まあ『グレンラガン』のメインスタッフが制作している作品なので、これは承知の上である。

作画とキャラクターが素晴らしいこともあって、ストーリーに飽きることは一切なかった。

演出

演出がお化け。先ほども述べた通り、リミテッドアニメーションだからこそできるケレン味ある演出が魅力的だった。特に満艦飾マコと針目縫の演出が面白い。満艦飾マコは昭和の漫画で用いられる記号論的な演出が、逆に斬新。針目縫のあの動かし方も、コスパが良いくせに、針目縫らしい不気味さを演出できている。

また、超王道だけど、ラストのクライマックスで最初のOPを流す演出が激アツすぎた。というか全体的に、超激アツだった。

キャラ

『キルラキル』はキャラクターがめちゃくちゃに良い。『グレンラガン』の主なキャラはシモン、カミナ、ヨーコ、ニアぐらいだった。一方で『キルラキル』は纏流子、鮮血、鬼龍院皐月だけじゃなく、生徒会四天王やヌーディスト・ビーチなど、印象的なキャラクターが数多く存在していた。

纏流子と鬼龍院皐月の作り込みも素晴らしい。女の子であそこまでカッコよくできるなんて。

音楽

前半OPの『シリウス』がめちゃくちゃ好き。藍井エイルの曲の中で一番好きなレベルだ。後半OPの『ambiguous』もノリノリのナンバー。

前半EDの『ごめんね、いいコじゃいられない』も僕好みの曲だった。曲を作ったのは沢井美空というシンガーソングライターで『冴えカノ』の『カラフル。』も作ってた人らしい。なるほど、僕好みの曲を作ってくれる。

後半EDの『新世界交響楽』は透明感かつポップなメロディーと歌で、これも僕好み。

あとは挿入歌の『サンビカ』が激アツ。

『キルラキル』の感想

※ネタバレ注意!

服を着るか、服に着られるか

『キルラキル』のテーマであり、最大の特徴でもあるのが”服”だ。『キルラキル』には生命繊維という特殊な繊維(実は生命体)が存在しており、生命繊維が含まれた服を着ると、潜在的な力を引き出せるようになるのである。本能字学園では「極制服」と呼ばれる生命繊維が織り込まれた制服が提供されており、それを着ている生徒は一つ星から三つ星までランクづけされる。

また、『キルラキル』では”人間だけが唯一、服を着る生物である”という指摘がされた。そして作中では、多くの人間が生命繊維に着られている状態であり、最終的にはラスボスである鬼龍院羅暁が、地球全体に生命繊維を着せようとする。

これらは、実に面白い視点である。

服を着るか、服に着られるか。服に着られる例としては、制服やスーツが挙げられるのではないだろうか。もちろん、自分から望んで制服やスーツを着る人もいるだろうが、大半の人は着られているのではなかろうか。ブランド服も例外ではないだろう。最近のアジア人は、ルイ・ヴィトンに着られているようにしか見えない。

主人公の纏流子は、自分から服(鮮血)を着る時はとてつもないパワーを発揮した一方で、嫌々で服(鮮血や純潔)に着られている時は、自分をコントロールできなかったり、パワーを引き出せなかったりした。纏流子の例は少々大袈裟だが、でも「服に着られている状態はあまり良くない」というメッセージは読み取れた。

日本式アニメのポテンシャル

僕は以前より「海外の高品質なアニメに対抗するには、リミテッドアニメーションだからこそできる表現を採用しないといけないのではないか」と考えていた。そうしないとディズニーやピクサーの超高品質な3DCGアニメ(1秒60コマのときがある)に太刀打ちできない(太刀打ちの必要性に関する議論は置いておく)。

それでいくと『キルラキル』は合格点どころか模範解答的な作品だった。3DCGでは決してできない演出のてんこ盛りである。イマドキ『キルラキル』のような作品は、まず日本でないと見ることはできないだろう。これは非常に大きな成果である。

『キルラキル』に限った話ではなく、TRIGGERの作品からは全体的にケレン味を感じる。一見するとサボりのような表現なのに、めちゃくちゃ癖になるのだ。

特に満艦飾マコの”くだり”は最高だった。

第4話と第7話が神回

『キルラキル』は後半からの怒涛の展開が魅力の作品だけど、個人的には第4話「とても不幸な朝がきた」と第7話「憎みきれないろくでなし」が好きなエピソードだった。

まず第4話「とても不幸な朝がきた」は、とにかくケレン味ある演出がてんこ盛りだった。TRIGGERを設立し『キルラキル』の監督を務める今石洋介が絵コンテを切っているエピソードで、今石監督が絵コンテを切っているエピソードは基本的に重要な回であることがほとんどだった。ということは第4話は、それなりにこだわりのあるクオリティだったと言えそうである。

実際、すごかった。ケレン味ある演出しかない。全部ミニキャラみたいな作画になっていて、実験的な表現を試みていたと思う。

また第7話「憎みきれないろくでなし」も、素晴らしいエピソードだった。纏流子の活躍により、満艦飾家の身分がどんどん良くなるのだが、それに伴い家族愛がどんどん失われていく様子が描かれるのである。このエピソードからは家族愛について素晴らしい教訓が得られる。

というか『キルラキル』は、家族愛がサブテーマになっている作品のように思える。満艦飾家と鬼龍院家が対比関係にあるのは間違いない。欲に負けて家族愛を失った先にあるのが鬼龍院家なのだろう。お金がなくても満艦飾家のように楽しくやっていけるのである。

ちなみに第7話「憎みきれないろくでなし」の絵コンテを切っていたのは、のちに『モブサイコ100』『デカダンス』『BLUE GIANT』の監督を務めることになる立川穣だ。

さいごに

『キルラキル』は、「ザ・TRIGGER」という感じのTRIGGERらしさが詰まった作品だった。これからもTRIGGERの原点は『キルラキル』になるのだろうし、作品のクオリティが極めて高いため、あと20年ぐらいは投資額を回収できそうな作品だと思う。

ということで、そろそろTRIGGER作品を全部視聴していこうと思う。やっぱりTRIGGERは素晴らしいアニメスタジオだ!

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