【薬屋のひとりごと感想】薬も過ぎれば毒になる

薬屋のひとりごと

今回は『薬屋のひとりごと』について語っていく。

『薬屋のひとりごと』は日向夏によるWeb小説(小説家になろう)が原作だ。そして2023年秋クールから2クールにかけてTVアニメが放送される。

アニメ制作はTOHO animation STUDIOとOLMが担当した。

目次

『薬屋のひとりごと』の評価

※ネタバレ注意!

作画77点
世界観・設定・企画75点
ストーリー78点
演出79点
キャラ73点
音楽82点
※個人的な評価です

作画

作画力が飛躍的に向上している現代アニメ界を考慮すると『薬屋のひとりごと』は相対的に見て、作画が特別いいとは言えないと思う。全体として現代的に仕上がっているのが特徴(光沢とか)。また、限られたリソースの中で可能な限り「良く見せる」技術は非常に高くて、そのおかげで「なんとなく作画がいい」という印象を与えることに成功している。

世界観・設定・企画

僕があまり好みではない世界観。でも、韓流ドラマとか好きな人には刺さりそうな世界観で、圧倒的に女性ウケがいい。なんだかんだ、この辺のジャンルを攻めているアニメ作品は『薬屋のひとりごと』しかないように思える。

企画としては、かなり大衆的に仕上げた印象を受ける。有名アーティストを起用したことに加え、マーケティングもかなり広く実施された。

ストーリー

ミステリー要素があるものの、その肝心のミステリーに関しては、そこまで深いものに仕上がっていない。というより『薬屋のひとりごと』のストーリーの真骨頂は、猫猫と壬氏のやり取りや、ラカンとの親子関係などの「愛」にあると思う。

ただし、全体としてシナリオとストーリーは「続きが気になる展開」になっていて、なんとなく見進めてしまう。

演出

『薬屋のひとりごと』の演出で印象に残ったのが、デフォルメ演出と、あえて不自然に見せる画面構成だ。

デフォルメ演出に関しては、猫猫のちびキャラな感じが可愛らしくて、これはこれで中毒性がある。適度にデフォルメ演出を挟んでくれたおかげで、終始、ポジティブな気持ちで視聴することができた。

画面構成に関しては、ネット上でも話題になっていた。『薬屋のひとりごと』は、不自然なぐらいのヒキの構成が多いのである。広く見せることで、登場人物の距離感を演出しているのわかるけど、それにしても不自然なぐらいにヒキなのである。多分、制作陣も「不自然であること」をわかっていて、あえて不自然にしているんだと思う。実際、不自然な画面構成は、目にとまる。

キャラ

猫猫がいいキャラをしている。悠木碧の声質によく合っている。猫猫のネガティブで陰湿な感じに感情移入するオタク女子は、僕が思う以上に多いのかもしれない。

音楽

OPの『花になって』と『アンビバレント』は、映像とのシンクロ度が高いこともあって、かなり印象に残る。ポップスって感じのメロディーだった。

EDの『アイコトバ』と『愛は薬』は、恋愛大好きな女の子が好きそうな感じの楽曲である。個人的には『アイコトバ』のメロディーが好き。歌詞は好きじゃないけど。

『薬屋のひとりごと』の感想

※ネタバレ注意!

なんで人気なんだろう……

というのが、正直な感想である。

『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などのジャンプ作品で人気が出るのはわかる。ジャンプ作品は編集部がとても優秀だと思うし、最近はアニメのクオリティが高い。

『魔法科高校の劣等生』などのラノベ作品で人気が出るのも、まあわかる。ここ最近のラノベ作品は、アニメの質がかなり微妙なのだけれど、オタクの劣等感を上手に煽っているので、それでついつい見てしまう。

でも『薬屋のひとりごと』は、ジャンプ作品や有名ラノベ作品に比べて、ツボ押しが浅いと思うし、アニメの質が特別高いわけではない。そのうえ「中華」というマイナーなジャンルの作品である。それにもかかわらず『薬屋のひとりごと』は、大衆的な人気を獲得することに成功している。僕の周囲でも「アニメオタクではないけど習慣的にアニメを見ている人」で『薬屋のひとりごと』を視聴している人が多い。

たしかに『薬屋のひとりごと』は、女性向けアニメとしては非常に優れていて、だから女性視聴者に人気が出るのはわかる。でも僕が思うに『薬屋のひとりごと』は、男性人気もかなり獲得できている気がする。

もちろん『薬屋のひとりごと』は、普通におもしろい。だが、刺激が強いとは言えない。ツボ押しが浅いのだ。特別エロいシーンがあるわけでもなく、特別グロいシーンがあるわけではない。『氷菓』『よう実』みたいな爽快さもないし、ボロ泣きするほどの感動シーンがあるわけでもない。もちろん、戦闘シーンは存在しない。でも、大衆的な人気を獲得できている。これが僕にとっては、実に不思議なのである。

『薬屋のひとりごと』が人気な理由として、プロモーションが挙げられる。どう考えても製作委員会は、オタクだけでなく一般視聴者もターゲットに入れた大衆的なプロモーションプランを組んでいたと思う。

また『薬屋のひとりごと』は、どちらかと言えばドラマに近い作品だと思う。アニメオタクでも楽しめるし、普段はドラマしか見ない一般視聴者にも刺さる作品。この絶妙なラインに位置する作品は、実は『薬屋のひとりごと』しかないのかもしれない。

薬も過ぎれば毒になる

僕は『薬屋のひとりごと』の最大の魅力であるヒューマンドラマのパートが、あまり刺さらなかった。それもそのはずで『薬屋のひとりごと』は、基本的に女性向けである。大半の男性には、ストーリーが刺さらない。

また、ミステリー要素のあるシナリオに関しても、あまり刺さらなかった。ミステリー要素に関しては『氷菓』や『涼宮ハルヒの憂鬱』などの方が、圧倒的に刺激されるからである。

そしてもちろん男性の僕が、壬氏に惹かれるはずもないから、キャラクターに対する感情移入も薄い。

じゃあ僕が一体どこに注目して『薬屋のひとりごと』を楽しんだのかと言うと、それは「薬学」である。猫猫は、超が付くほどの「薬オタク」で、薬学・医学に精通していたり、植物の知識が詳しかったりする。一方で、薬というのは厳密に言えば「毒」であるから、猫猫は「毒オタク」とも言える。実際、猫猫は毒が大好物で、定期的に毒を摂取したり塗布したりして、自分を痛めつけている(このMな感じがもしかして男性ウケに繋がってるの?)。

結局は「薬も過ぎれば毒になる」というやつだ。そしてそれは「薬」に限った話ではなく、一般的にはいいものとされている「愛」や「ポジティブマインド」でも同じことが言えるのではないだろうか。その典型的なエピソードが、猫猫の両親のいざこざだと思う。

僕は『薬屋のひとりごと』が全体としてあまり好きではない。でも、その中でも色々な視点を試してみて、少しでも「おもしろい」と思える部分を見つけようと工夫した。そして、その中で得られるモノが、あとで役に立つことがあるし、その気づきがきっかけで、全体として「おもしろい!」と思えることも多々ある。視点を変えることの重要性を『薬屋のひとりごと』で再認識できた。

さいごに

『薬屋のひとりごと』は、続編制作が決定している。結局、僕は『薬屋のひとりごと』にはハマり切れなかったので、続編を視聴するかどうかは微妙だけど、まあ暇な時間を見つけて、視聴できればいいなぁと思う。

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