今回は『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク(以下、幻影の覇者ゾロアーク)』について語っていく。
劇場版第13作目となる『幻影の覇者ゾロアーク』は、2010年に公開されたポケモン映画だ。アニメ制作はOLMが担当している。
『幻影の覇者ゾロアーク』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 75点 |
ストーリー | 75点 |
演出 | 70点 |
キャラ | 75点 |
音楽 | 77点 |
作画
作画のクオリティはまずまず。『ダイヤモンド&パール』の場合、一応、年が進むごとにクオリティは高まっている気がする。特に3DCGの使い方の成熟度が増した感じ。あと、人間キャラの動きが良くなってきてる。
一方で、戦闘シーンの構図がワンパターンになりがちになっている感じがある。ちゃんと見比べていないけれど、少なくとも刺激的な戦闘シーンが見受けられることがなくなった。
世界観・設定
舞台となったクラウンシティはオランダとベルギーがモデルになっているらしい。ヴェネチアに似ていたから、多分、世界遺産のブルージュがモデルだと思う。個人的には『水の都の護神』のアルトマーレよりも好きな街並みだ。水だけでなく緑も美しい。
一方で、それをセレビィと結びつけるのは少し無理があった気がする。やっぱり僕としては『セレビィ時を超えた遭遇』の森の印象が強いからだ。でも『HGSS』の関係もあるのだろうから、それを考えると今回の舞台設定はベターな判断だったといえる。
ストーリー
久しぶりに親子が強調されたストーリーだった。これほどまでに親子を強調したのは、多分、『結晶塔の帝王エンテイ』以来だと思う。『蒼海の王子マナフィ』はちょっと薄い。
ということで、いつも通り感動テイスト強めのストーリーだったけれど、この”感動”に関しては、かなりワンパターンになってきている。ゲストポケモンが街を救うのだけれど、それで瀕死になる……みたいなのが『セレビィ時を超えた遭遇』以来ずっと続いている。そろそろ、また違った感動系のストーリーを見てみたい。
演出
どこか懐かしい雰囲気を感じたと思ったら、どうやら『結晶塔の帝王エンテイ』や『セレビィ時を超えた遭遇』で用いられていたBGMを再編曲したものが劇伴で採用されていたらしい。この劇伴を用いるシーンの演出は、たしかに良かったと思う。
その一方で先ほど述べた通り、感動がワンパターンになっている。『幻影の覇者ゾロアーク』に関してはこれまでの作品よりも情緒的に演出できていたと思うけれど、それでもやはり、似たり寄ったりだ。
あと、超絶久しぶりにロケット団の「いい感じ〜」が物語を締めた。やっぱり最後はロケット団に締めさせた方がしっくり来る。しかも超名言だし。
キャラ
今回の敵役キャラであるコーダイは、なんと未来視の能力を保有しているトンデモ人間だった。実はなんだかんだで、トンデモ能力を保有する”敵役キャラ”が登場するのは初めてのことだ。おかげさまでこれまで以上に敵役キャラが強烈だった。
音楽
作品の雰囲気に歌詞が全然合ってないと思うけれど、メロディーは雰囲気に合っている『アイスクリームシンドローム』が名曲だ。それで歌詞をよくよく読み返してみると、サトシとタケシの関係性を描いていることに気づく。本作でタケシが最後のポケモン映画になっているので、なんだかんだで感慨深い……。
『幻影の覇者ゾロアーク』の感想
※ネタバレ注意!
未来はわからない方が面白い
これまでのポケモン映画は過去をテーマにしたことは何回もあったけれど、未来をテーマにしたことはほとんどなかった。それで今回の『幻影の覇者ゾロアーク』では、未来が一つのテーマになっていた。
今回の敵役キャラであるコーダイは、セレビィの時渡りポイントである”時の波紋”のエネルギーを自らに取り入れることで、未来を視る力を手に入れ、それで事業を大成功させていた。
まあたしかに一度くらいは「未来が予測できたらなぁ」と考えることが誰しもあると思う。少なくとも僕はよく未来について考えるから、そんなことを思うときがある。
しかし未来がわかってしまっては、人生の面白味が無くなってしまうのも事実だ。この世は、不確実性なものだらけだから面白いのだ。ロケット団のラストのセリフがまさに的を得ている。
コジロウ「なあ、未来が見えたらどうする?」
ニャース「そんなのきっと、つまらないのニャ」
コジロウ「どうしてさ?」
ムサシ「未来がどうなるかわかんないから、今がハラハラドキドキして楽しいんじゃない」
『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク』より引用
ちなみにロケット団の「いい感じ〜」が飛び出たのは『七夜の願い星ジラーチ』ぶりで、ラストを締めるのは『セレビィ時を超えた遭遇』ぶりだ。やっぱりロケット団に締めてもらった方がいい感じになると思う。マジで。
“フェイク”がもう一つのテーマ
今回の『幻影の覇者ゾロアーク』のもう一つのテーマが”フェイク”だ。そもそもゾロアークやゾロアが”フェイク”を象徴したポケモンだし、コーダイが序盤に仕掛けた情報統制も”フェイク”を活用したものだ。
『幻影の覇者ゾロアーク』が公開された2010年は、スマートフォンが登場し始めた頃ぐらいの時期で、それはつまり、誰もが常時インターネットに接続する時代の始まりの時期だったとも言える。その時代で懸念されていたのは、双方向的なやりとりが可能になるWeb2.0時代における情報の信頼性問題だ。誰もが情報を発信できる時代では、当然のことながら、嘘の情報が紛れこむことがある。
僕が書いているこのブログだって、どこか間違っている部分があるかもしれない(少なくとも僕は意識的に嘘を書かない)。今となってはフェイク情報に気を付けることは当たり前のことだけれど、2010年当時であればかなり早い段階での啓蒙になる。
まあ別に製作陣も、「フェイク情報に気をつけろ!」みたいな啓蒙を本作で試みたわけではないと思う。それこそ勝手に僕がそう解釈しただけだ。
けれども、今こうやって振り返って視聴してみると、やはり”フェイク”が一つのテーマになっている気がしてならない。
さいごに
これでついに『ダイヤモンド&パール』のポケモン映画が終了で、ヒカリとお別れなのはもちろんのこと、タケシともお別れだ。当時の僕としてもタケシがお別れになった衝撃度は大きく、『ベストウィッシュ』になってからTVアニメを視聴した記憶がほとんどない。ということは多分、僕は『ベストウィッシュ』をほとんど視聴していない。
だから逆に言うと、『ベストウィッシュ』以降のポケモン映画が結構楽しみなのである。視聴次第ブログにしていこうと思う。