今回は『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争(以下、SAC_2045持続可能戦争)』について語っていく。
『攻殻機動隊』は士郎正宗による漫画が原作で、2002年にTVアニメ『攻殻機動隊S.A.C.』が放送。2004年にTVアニメ2期となる『攻殻機動隊S.A.C.2nd』が放送され、2006年には長編アニメの『攻殻機動隊S.A.C.SSS』が放送された。そして2020年、全編3DCGの『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン1が配信される。
そして2021年11月、『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン1の総編集版である『SAC_2045持続可能戦争』が上映される。
アニメ制作はProduction I.GとSOLA DIGITAL ARTSが担当した。
『SAC_2045持続可能戦争』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 89点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 83点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 85点 |
音楽 | 80点 |
作画
作画に関しては、大きな違いがない。だが明らかに、色彩やテクスチャが異なっていた。映画館を想定して、より実写的な編集がされたのだと思う。個人的には、暗所でのシーンのノイズが印象的だ。これも多分、意図的につけたものだと思う。
世界観・設定
実質的に2度目の視聴になるので、1度目の視聴に比べて、世界観の理解が深まっている状態で冒頭部分を楽しむことができた。
ストーリー
ストーリーの順番がガラッと変更されていた。前作ではトグサの失踪シーンが最後だったけれど、本作ではトグサの失踪シーンが先に描かれ、そのあとにポストヒューマンによる総理襲撃(というより接近)事件が描かれた。これによって、キャラクターより世界観が強調されていたように感じられる。実際、総理関連のシーンがラストで描かれたことで、ポストヒューマンの問題が国家全体に関わるものなのだと、再認識することができた。
演出
総編集版なので、演出は特に変わりなし。でも、ストーリーの順番を入れ替えるだけで「結構、印象が異なるなぁ」と感じた。
キャラ
個人的には『SAC_2045』の新キャラ・江崎プリンが中々に好き。荒巻も「次の世代のための仕事」って言っていたし、プリンにはそういう役割があるのかもしれない。
音楽
音楽は特に変化なし。新しい主題歌が用いられていたわけではなかった。
『SAC_2045持続可能戦争』の感想
※ネタバレ注意!
総理が強調されてた気がする
『SAC_2045持続可能戦争』は、実写映画で活躍する藤井道人が監督を担当した。監督と言っても、基本的には素材を調理するだけ。でも、ストーリーの順番を入れ替えたり、カラーグレーディングをやり直していたりしていて、また違った印象を受けたのは事実だ。
その中でも、最も印象的だったのは、やはりストーリーの入れ替えだろう。Webアニメ版では、トグサの失踪がラストに挿入されていたけれど、『SAC_2045持続可能戦争』は終盤に入る手前ぐらいにトグサの失踪が描かれ、そのあとに総理失踪が続く流れだった。
『SAC_2045持続可能戦争』の肝だと言えるシマムラタカシの回想シーンもかなり大幅にカット。その分、公安9課の動きや、久利須総理が印象に残った。
『攻殻機動隊S.A.C.』での茅葺総理もそうだったけれど、『攻殻機動隊』では”日本の独立”がやたらと強調されていた経緯がある。茅葺総理も、完全に自立した日本を強く目指していたし、久利須総理も、日本の完全な独立を強く願っている印象がある。『SAC_2045』の始まりもアメリカだったわけだし、本作は特に「日本とアメリカの関係」が深掘りされているように思う。
現段階ではポストヒューマンの動機がよくわからないけれど、持続可能戦争を引き起こしたり、総理の意思を伺おうとしたりしていて、ジョン・スミスが言うように、既存の社会システムを壊そうとする意思を感じる。これは、クゼ・ヒデオに通ずる部分がある。
藤井道人監督は、多分、政治関連の部分を強調したかったんじゃないかなぁと思う。たしかに『攻殻機動隊』は、テクノロジーと人間の社会的関係や、そもそも人間とは何かという哲学的な部分が注目されがちで、政治については、あまり注目されていない印象がある。ということで、僕としては、シーズン2を視聴する際に、もっと政治的な部分に注目していこうと思う。
さいごに
僕は可能な限り、総編集版を視聴するようにしている。実質的に2度目の視聴なので新しい発見があるし、サクッと見れるのもいい。そして『SAC_2045持続可能戦争』のように、ガッツリ編集されているケースもあるので、それも新しい発見に繋がる。
さて、次はシーズン2の視聴だ。『攻殻機動隊』がどのようなエンディングを迎えるのか、楽しみにしたいと思う。