【すずめの戸締まり感想】首都直下型地震を想起

すずめの戸締まり

今回は『すずめの戸締まり』について語っていく。

『すずめの戸締まり』は2022年に公開されたアニメ映画で、新海誠が監督を務めている。新海誠の前作『天気の子』が2019年、前々作『君の名は。』が2016年に公開されているので、3年ごとに新作が上映されている計算になる。

アニメ制作はコミックス・ウェーブ・フィルムが担当した。

目次

『すずめの戸締まり』の感想

ネタバレ注意!

首都直下型地震を想起させる内容

Wikipedia先生によると、新海誠はここ10年間、東日本大震災を意識していたのだという。『君の名は。』は彗星に、『天気の子』は気候変動という形に変えて、震災を表現していたのだ。

しかし今回の『すずめの戸締まり』は、直接的に震災を描いている。鈴芽が日記を開くシーンで、3月11日のページ以降が黒塗りにされていたのが印象的だった。

そのうえ、宮崎→愛媛→神戸→東京という、南海トラフや首都直下型地震を想起させる旅路がヤバい。ダイジンが「たくさん人が死ぬね」って言っていたけど、もし首都直下型地震が発生したら、冗談抜きでたくさんの人が死ぬだろう。

僕は基本的に、不安を煽るようなコンテンツというのがあまり好きではない。不安はビュー数を稼ぐことができるので、数字目的で不安を煽るケースが多く見受けられるからだ。

だが『すずめの戸締まり』に関しては別である。そもそも映画はお金を払ってから内容を知るわけだから、数字目的で不安を煽るケースに、『すずめの戸締まり』は当てはまらない。

また、現代の日本人は、どう考えても地震の恐ろしさを忘れている。もし本当に地震を恐れているのであれば、様々なものを分散させるべきなのに、人々はそれを実行していない。

だから僕たち日本人は、地震大国で生きるということのリスクの大きさを、もう一度考え直さなければならないと思う。そういう意味で『すずめの戸締まり』はとても意義のあるコンテンツだったと思う。しかも新海誠作品という大衆寄りのコンテンツで、こういうメッセージを伝えられるのは大きい。あとは人々がこのメッセージに気づき、行動できるか次第だと思う……。

若者よ、旅に出よ

『すずめの戸締まり』の舞台は、日本列島だ。ということで主人公の岩戸鈴芽(CV.原菜乃華)は、宮崎→愛媛→神戸→東京→東北という順序で旅に出るストーリーだった。

思えば『君の名は。』も主人公が東京から岐阜に旅してるし、『天気の子』でも主人公が神津島から都心に旅しているところからスタートしている。また『秒速5センチメートル』も、よくよく考えてみたら東京から栃木に旅している。

そしてそれぞれの作品で形は違えど、主人公たちは旅を通じて”何か”を手に入れることができた。

だから僕は、若者にはぜひとも旅に出てほしいと思う。僕も現在22歳で旅している身なのだけれど、インターネットでは決して得ることのできない経験を手に入れることができる。それはクリエイティブの拡張に大いに役立つはずだ。

『すずめの戸締まり』の評価

作画93点
世界観・設定90点
ストーリー88点
演出85点
キャラ80点
音楽80点

作画

作画のクオリティは半端なく高い。けれど、『天気の子』から3年という時が経った割には、クオリティがそこまで高まっていない気がする。もちろん細かい部分の作り込みは増しているが、決定的なブレークスルーがない。次作ではもっと革新的な作画を見せてほしいなぁと思う。

世界観・設定

震災、廃墟、旅など、様々な要素がテーマに組み込まれていたと思う。特に、東日本大震災というセンセーショナルなテーマを扱ってきたのが興味深い。震災当時に物心がまだなかった子どもたちが、今は高校生になってるんだ……。

ストーリー

濃密なストーリーだった。すずめが日本中を旅して、その度に舞台が変わっていったからこそ、濃密に感じられたのだと思う。

演出

『天気の子』に比べるとクライマックスのインパクトが弱かったけど、その代わりに、鈴芽と環の喧嘩のシーンの演出が際立っていた。思わず目を覆いたくなるシーンだった。良い意味で。

キャラ

『すずめの戸締まり』は女主人公視点がメイン。新海誠作品では久しぶりだ。

また、鈴芽が旅先で出会ったキャラは、そこら辺にいそうだけどどこか印象的で、よく作られてるなぁと思う。

音楽

『君の名は。』と『天気の子』ではボーカル入りの楽曲を何曲もガンガン出してたけど、『すずめの戸締まり』はわずか2曲だけ。これはちょっと意外だった。

その代わりに色々な音を組み合わせた劇伴が数多く登場したのが印象的。

さいごに

順当にいけば2025年に新海誠次回作が公開されることになるのだろう。だが僕としては、新海誠監督には世界を舞台にした作品を作ってほしいと思う。

『すずめの戸締まり』で日本列島を舞台にしたのだから、次は世界だろう。現在、日本のアニメーション作品は、国内をメインターゲットにしているためか、それともコストを抑えるためか、日本国内を舞台にしていることがほとんどだ。でも本気でクールジャパンを実現させるのであれば、海外をメインターゲットに、世界を舞台にした日本のアニメを制作すべきだと僕は思う。別に全部そうである必要はないが、世界を舞台にしたアニメ作品があまりにも少なすぎる。

そして新海誠であれば、世界中の絶景をアニメーションという形で美しく演出することができるはずだ。多分、新海誠が一通り世界を見て周り、それに対して十分なクリエイティビティを発揮するのに少々時間がかかるだろうから、6年ぐらいは見積もっていい。僕は全然待てる。

とにかく、もっと大きく勝負してくれると、一ファンとしてめちゃくちゃ嬉しいなぁと思う。

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