今回は『甘城ブリリアントパーク(以下、甘ブリ)』について語っていく。
『甘ブリ』は、『フルメタル・パニック』の著者である賀東招二によるライトノベルが原作だ。そして2014年秋クールにTVアニメが放送される。
アニメ制作は京都アニメーションが担当した。
『甘ブリ』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 88点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 85点 |
演出 | 88点 |
キャラ | 90点 |
音楽 | 80点 |
作画
「やっぱり京アニってすげぇ」って思ってしまう作画だ。キャラクターデザインは『氷菓』みたいな感じで、2010年代以降の京アニ作品って感じがする。でもその一方で、動き自体はとてもコミカル。『日常』みたいなキレの良さを感じた。
世界観・設定
これまでにほとんどない遊園地再建の物語。現実的でありながらファンタジー要素も強く、オリジナリティの強い世界観だ。ここ最近の京アニ作品は繊細な印象を受けるけれど、『甘ブリ』は2000年代の京アニらしさが詰まっていると感じる。
ストーリー
寂れた遊園地を頭のキレる高校生が再建させるというストーリー。基本的に1話完結型になっていて、テンポ感があるのでスラスラ視聴できる。また、ギャグ要素が非常に強いのが個人的にいい感じ。それでいてシリアス要素のバランスよく取り入れられている感じがする。
演出
『甘ブリ』はギャグのキレが抜群にいい。まずボケとツッコミの役割が明確になっているのがいい。キャスト(主に3バカ)によるブラックジョークに対して、千斗いすずが容赦無く銃弾を放つ。また、可児江西也といすずの無感情なセリフが個人的に好みだ。特に第1話『お客が来ない!』におけるいすずの甘ブリ紹介は非常に面白かった。
キャラ
『甘ブリ』はキャラクターが非常に良い。特に、マスコットたちの個性が強すぎて、とても印象に残る。『甘ブリ』はかなりの数のキャラクターが登場するが、それでも大体のキャラのイメージを掴める。
まず動物や物を擬人化しているのがポイントだ。これで印象に残りやすくなる。それでいて可愛らしい姿から放たれるブラックジョークがギャップを生んでいる。「マスコットをもっと全面に出していく」というのはアニメ側の判断らしい。
音楽
京アニ作品にしては珍しいフライングドッグが音楽制作を務める。
OPの『エクストラ・マジック・アワー』は王道路線ではあるものの盛り上がりの良い曲だった。OP映像の質の高さも相まって、非常に印象に残る曲だった。
『甘ブリ』の感想
※ネタバレ注意!
やっぱ京アニってすげぇや
京アニ作品の感想記事を書くときに、毎回同じことを書いているような気がするけど、やっぱり京アニってすごい。京アニ作品の中だと『甘ブリ』はあまり有名じゃないから、そこまで面白くないのだと思っていた。しかし、良い意味で予想は裏切られた。めちゃくちゃに面白い。
まず前提として『甘ブリ』は、京アニらしくない作品だと感じる。世界的に見て京アニというアニメスタジオは、暴力やエロスに依存しない作風がグローバルに評価されている傾向がある。たしかに多くの京アニ作品は、グロやエロに頼っていない。
一方で『甘ブリ』は、京アニにしてはブラックジョークが多い作品だと思う。まさか京アニ作品から「オ○ニー」とう単語が出てくると思わなかった。特にティラミーは強烈なキャラだった。なお、これでも原作小説に比べるとかなりマシなのだそうだ。
エンタメとは何か
『甘ブリ』からは色々なことを学べる。非常にギャグ要素の強い作品である一方で「遊園地を再建させる」というストーリーだったため、主にビジネスとエンタメで学ぶことが多かった。
まずビジネスでは、可児江西也が口にした以下のセリフが印象的だった。
1000人よりも、1001人を呼ぶためだ。
『甘城ブリリアントパーク』より引用
このセリフで、いすずとモッフルは「もしかしたらこいつだったら……」という印象を抱くことになる。
『甘ブリ』では、あと3ヶ月であと25万人を集客しなければならないという目標が設定されていた。この目標は非常に難易度が高いもので、多くのキャストは諦めるかヤケになるかのどちらかだった。しかし可児江西也は、まず1人でも多くのキャストを集めることを最優先事項とした。
個人的に印象的なのは「0人よりも1人」ではなく「1000人よりも1001人」と口にした点だ。「0→1」は非常に大きな成果である一方で「1000→1001」は「1」の重みが軽く感じられる。だがそれでも「1人でも多く」を最優先にすべきだと、可児江西也は口にしたのだ。たしかに、こいつは経営手腕に優れている。
また、このセリフは終盤の展開にも繋がることになる。目標を達成できないことに焦りを感じた可児江西也はヤケになってしまう。そこでモッフルが、先ほどのセリフをブーメランで返すのだ。
そして最後の最後に、キャストが自分の人脈を駆使してどぶ板営業で客を集めることで、目標を達成することができた。結局、経営は「泥臭く」が大事なんだなぁと感じさせられる。それは、どんなに華やかな遊園地であっても、だ。いや、むしろ華やかであればあるほど、その裏側に泥臭さがあるのかもしれない。
エンタメにおいては、可児江西也の以下のセリフが印象的だった。
だれかに夢を見せたいなら、まず自分たちがその夢を信じるべきなのだ!
『甘城ブリリアントパーク』より引用
このセリフは、実に的確である。エンタメは、やはり客を楽しませるのが最優先だが、そのためには、まず自分自身が楽しむ必要があるのだと思う。これは、作品全体の世界観に通ずる部分もある。アニムスやアゲルの存在が典型的だ。
それにしても、このセリフを思い返すと、なんだかラティファと重なってくる。なんだかんだでエンタメを最も理解していたのはラティファなのかもしれない。
さいごに
個人的に『甘ブリ』は、とても好きな作品になりそうだ。京アニが提供できるエンタメ性を全て詰め込んだ作品な気がする。『日常』やKey作品で培われたギャグの演出が、惜しげもなく投下されている印象を受けた。
本当であれば続編も見たいけど、原作を京アニが有しているわけでもないし、非常に綺麗にまとまったし、年月もかなり経過しているので、続編制作はないだろう。機会があれば原作小説も読もうと思う。