青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(劇場版青ブタ)評価:感想

星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は2019年に上映された『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(以下、劇場版青ブタ)』について語っていく。
『青ブタ』はTVアニメを2018年に放送しており、その続編が『劇場版青ブタ』だ。興行収入は5億超えで深夜アニメの中では大成功といったところだろう。

目次

『劇場版青ブタ』の感想

感想①:もう少し高クオリティに仕上げられたのでは…?

『劇場版青ブタ』は普通に面白かったのだが、それよりも「もう少しクオリティを追求できたのではないか?」という気持ちの方が強かった。僕は『劇場版青ブタ』をdアニメストアで視聴しているので、大迫力な演出を楽しめる映画館とは中々比較できないところではある。でもやはり、クオリティに目がいってしまった。

そもそも『劇場版青ブタ』は、原作の第6巻にあたる『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』と第7巻の『青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』を映像化している。アニメやラノベに慣れている人は、この段階でどう考えても尺が足りないことに気づく。ライトノベルをアニメ化する場合、原作3巻分を1クールで映像化するのがベーシックなペースだ。そしてバトル系よりも日常系やラブコメ系の方が心情描写が多い分、映像化のペースが早くなり原作4巻分を1クールで放送する場合もある。
しかし『青ブタ』の場合、TVアニメでさえも原作5巻分を1クールで消化するという急ぎ目のペースだった。これはまだ許容範囲なのだが、89分の劇場版に原作2巻分はいくらなんでも詰め込みすぎだ。セカイ系で元々難解な世界観・ストーリーだったのに、余計分かりづらくなった。

それに加えて登場人物の表情のパターンが少ない印象を感じた。詰め込んでいることもあり、普段はクールな梓川咲太と桜島麻衣がしょっちゅう泣くようになる。それはそれで良いのだが泣き表情が1パターンなので、涙がとても軽くなってしまった。普段クールなキャラが泣くシーンはギャップも重なって見応えがなければならないのに、それが全く感じられなかったのだ。

僕は原作を未読なのだが、ストーリーや心情描写は絶対に面白いのだと思う。それを最大限生かせるようなアニメ制作をしてほしかったと、一人のファンとして感じてしまった。
一応繰り返しておくが、『劇場版青ブタ』は普通に面白かった。だが、期待値が高い作品だったので厳しめの感想を抱いてしまったのだ。

感想②:やっぱり『ハルヒ』を意識している

『青ブタ1期』について語った記事で、『青ブタ』は『ハルヒ』と似ているというように語らせていただいたが、『劇場版青ブタ』も『劇場版ハルヒ』とよく似た構造になっていた。

『劇場版青ブタ』のメインパートはタイムリープだ。主人公・梓川咲太と本作のメインヒロイン・牧之原翔子がタイムリープを駆使し、もがき苦しみながらも幸せな未来を掴み取る構成になっている。その中では梓川咲太が自分を犠牲にしてまでみんなの世界を守ろうとしたりするシーンもある。
一方で『劇場版ハルヒ』のメインパートもタイムリープだ。主人公・キョンの周りの世界が変貌してしまうところからストーリーが始まり、世界を元通りにするためにタイムリープを駆使する。そして最終的には自分を犠牲にしながらも本当の世界を取り戻すことができた。他にも細かい点で類似点があったりするので、やはり『青ブタ』は『ハルヒ』を参考にしながら作られたものなのだろう。

劇場版アニメで比べるのであればどう考えても『劇場版ハルヒ』の方が高クオリティだ。原作1巻分を2時間40分という尺を使い京アニの高作画で表現しているのだ。面白くないわけがない。『劇場版青ブタ』はおそらくどんなに頑張っても『劇場版ハルヒ』を超えるのは難しいかもしれないが、ポテンシャルは十分にあったのでもっと面白い作品に仕上げることができたと思う。まあ出版社との兼ね合いもあったのだろうからしょうがないところかもしれない。

『劇場版青ブタ』の評価

作画80点
世界観・設定85点
ストーリー85点
演出75点
キャラ85点
音楽80点

作画

劇場版だからといって特別作画がよくなったわけではない。むしろ相対的に見たらTVアニメよりレベルが落ちたと考えてもいいのかもしれない。

世界観・設定

世界観・設定は良いのだろうが、尺が短かったので説明が少なかったのが残念。

ストーリー

TVアニメではストーリー展開に定評があったが、劇場版は個人的にはちょっと微妙に感じてしまった。良くも悪くもありがちのタイムリープものだった。

演出

泣き演出はちょっとくどかったかもしれない。頻度が多いのでしょうがないのだが、泣きパターンを増やしてほしかった。

キャラ

ヒロインはほとんど登場していたのは良かったが、やはり尺が足りないのでサブヒロインのやり取りが少なめだったのが残念。

音楽

EDを『不可思議のカルテ』にしたのは正解だと思う。

『劇場版青ブタ』の評価

少し厳し目の評価になったが、基本的に面白かったし興行収入5億円超えというのが人気ぶりを証明している。個人的には2期制作は全然あると思っているが、電撃文庫の動向もあるし、他のラブコメだとエロマンガ先生(個人的にはこっちを押してほしい)もあるのでなんとも言えないところだ。
このパターンの作品は原作の方が絶対面白いので、気になる人は原作ライトノベルを購入するといいだろう。

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