【ガルクラ感想】セルルック3DCGと手描きの融合が生み出す新境地

ガールズバンドクライ

今回は『ガールズバンドクライ』について語っていく。

『ガールズバンドクライ(以下、ガルクラ)』は東映アニメーションによるアニメオリジナル作品で、2024年春クールに放送された。アニメ制作は東映アニメーションが担当している。

目次

『ガルクラ』の評価

※ネタバレ注意!

作画90点
世界観・設定・企画83点
ストーリー83点
演出84点
キャラ83点
音楽84点
※個人的な評価です

作画

メインキャラクターはセルルック3DCGで作りながら、背景、エキストラ、回想シーンを手描きで作っている。2024年現在、セルルック3DCGと手描きアニメをどのようにミックスすべきかがトレンドになっていると思う。その点で『ガルクラ』の取り組みは非常におもしろく、東映アニメーションにとって大きな転換点になる可能性が高い。

セルルック3DCGのクオリティは非常に高く、手描きアニメと遜色ないレベルになっている。背景を手描きにするということは、3DCGのメリットでもあるカメラワークを失うことになる。だが実際、ほとんどの映像はFIXで十分で、カメラを大胆に動かす必要のあるライブシーンだけ、背景を3DCGにすればいい。多分『ガルクラ』は、コスパもかなりいいと思う。

世界観・設定・企画

これまで数多くの音楽系アニメが登場してきた。その中でも『ガルクラ』は、アングラな感じを強調して、登場人物のほとんどが社会不適合者である。でも、本来であればこういう人たちが、新しい音楽を作ってきたはずだ。そういう意味で『ガルクラ』は正真正銘の音楽系アニメだと思う。

また、川崎という舞台設定もナイスだ。

個人的に、東映アニメーションは旧態依然としていた印象があったが、『ガルクラ』を作れるくらい若い人材がいるのなら、ちょっと期待できる。

ストーリー

ストーリーはめちゃくちゃおもしろい。とにかく破天荒。『アイマス』や『ラブライブ!』や『響け!ユーフォニアム』などの音楽系アニメの脚本を数多く担当した花田十輝ということで、全体的に安定感がある。ラストの何とも言えない締まり方を含めて、花田十輝らしい。

演出

セルルック3DCGと手描きアニメのミックスの仕方が絶妙だ。「完全にセルルック3DCGじゃない」というのが逆に新しいし、これは東映アニメーションにしかできない芸当だと思う。

また、キャラクターの漫画的な表現も際立っていて、こうなってくると、多くのアニメーターを集めて手描きアニメで頑張るメリットが薄れてくる。

キャラ

とにかく社会不適合者しかいない。まともに学校に通っているやつはゼロ。でも、これぐらい突き抜けてた方がおもしろいし、そもそもロックってそういうものである。

また、今回はオーディションで声優&ボーカルを採用したようだけど、全体的に声優の演技はドンピシャだった。

音楽

マジで全部いい曲。個人的には結束バンドより『ガルクラ』の曲の方が好きかも。

やっぱりピアノサウンドが入っているのが差別化要因だと思う。どの楽曲もピアノサウンドを前面に出している気がする。

それに、ボーカルの音域も高い。高音域でパワーを出せれば、その分、低音域も強くできる。結果としてまとまりのあるメロディーができあがる。

『ガルクラ』の感想

※ネタバレ注意!

こんなアングラな音楽アニメを待ってた!

僕はもしかしたら、ずっと『ガルクラ』のようなアングラな音楽アニメを待っていたのかもしれない。

僕は『けいおん!』がとても大好きで、「好きなことやってればいいんじゃなーい!?」というメッセージ性がとにかく好きだった。ちょっとジャンルが違う気もするけど『響け!ユーフォニアム』も好きで、『ガルクラ』と同時期に放送されたTVアニメ3期については最高だった。花田十輝先生様様である。

一方で『ラブライブ!』『ぼっち・ざ・ろっく!』に関しては、どちらかと言えば好きなんだけど『けいおん!』ほどはハマれなかった。どちらも夢を追いかける作品ではあるのだが、なんか中途半端な感じがする。僕は『よりもい』も好きなんだけど、やっぱり夢を追いかけるのであれば、それなりにアウトサイダーの領域に突っ込む必要があると思うのだ。

よく考えてみれば、アウトサイダーまっしぐらの音楽系アニメは、あまり存在しない。なんだかんだで、どのアニメも「現実と夢」のバランス具合ばかり焦点を当てていて、完全に夢に突っ走ろうとする作品は、意外に少なかったのだ。

そんな中、『ガルクラ』が放送される。『ガルクラ』に登場する5人のメインキャラは、いずれも社会不適合者で、学校には通わないし、就職もしていない(すばるは一応芸能スクールに通学)。そのうえ、音楽性にもこだわり、せっかく入れた芸能事務所を秒で退所しようとする曲者集団だ。

こいつら、とにかく頭のネジが外れてる。でも、ちゃんと可愛い。ネジの外れ具合とカワイイの両立が、大切なんじゃないかと思い知らされた。

セルルック3DCGと手描きのミックスがおもしろい!

『ガルクラ』のおもしろいところは、やっぱり映像だろう。

2022年に東映アニメーションが公開した『THE FIRST SLAM DUNK』をキッカケに、セルルック3DCGが大衆に受け入れられるように。それに伴い、セルルック3DCGアニメは急増。また、3DCGと手描きアニメをどのようにミックスさせるかがトレンドになっている。

手描きアニメにおける3DCGの一般的な使い方は、背景とモブキャラだ。いちいち手で描くのが面倒くさいモブキャラ(民衆を3DCGで制作することでコストカット。また、背景を3DCGにすることで、立体的なカメラワークが可能になり、戦闘シーンの迫力が増す。その代表的な作品が『鬼滅の刃』だ。

しかし『ガルクラ』は、この真逆のことをやり遂げてみせた。メインキャラを3DCGにして、背景を手描きにしたのだ。この取り組みにより、セルルック3DCGがより手描きアニメに近い雰囲気になり、フルアニメーションも安価に実現できる。

また、回想シーンを手描きにする演出もおもしろかった。あれは多分「過去と現在は違う」みたいなことを演出しているのではないかと思う。実際にOP映像の、手描きとセルルック3DCGの使い分けからも、それなりのメッセージ性が感じられた。

それに加えて、そもそものセルルック3DCGのクオリティが高い。ちゃんと手描きアニメっぽく作っていたのである。

日常シーンからライブシーンまで一貫してセルルック3DCGなので、音楽系アニメにありがちな「ライブシーン挿入前の境界線」が無くなり、日常シーンからライブシーンまでがシームレスに繋がっている。

また、背景を手描きにすることで、将来的に生成AIを制作フローに取り込みやすくなるメリットもある。

ということで『ガルクラ』の映像作りは、とても未来的で、おもしろいと思う。

さいごに

『ガルクラ』は1クールで綺麗に終わった一方で、続編制作にも対応できる終わり方にも感じられる。実際『ガルクラ』がヒットするかどうかは制作前段階で微妙だったから、このシナリオの作り方は正しい。

それで結果として見ると、やはりちゃんとヒットしているように思う。充分に続編制作を検討していいラインだ。

ただし少なくとも『ガルクラ』は、劇場総集編の公開をやるんじゃないかなと思う。何といっても東映アニメーションの上には、配給会社の東映がいる。映画をやっても全然おかしくない。

ということで続編を楽しみに待ってます。

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