【傷物語鉄血篇感想】アニメを通り越してもはや現代アート

傷物語鉄血篇
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『傷物語〈I鉄血篇〉(以下、傷物語鉄血篇)』について語っていく。

原作小説だと『化物語』の次に語られる物語だが、アニメでは『終物語(上・中)』の次に、劇場アニメ三部作として上映された。その劇場アニメ三部作の第1作目が『傷物語鉄血篇』で、2016年1月8日に上映された。

アニメ制作はシャフトが担当している。

目次

『傷物語鉄血篇』の評価

※ネタバレ注意!

作画95点
世界観・設定90点
ストーリー90点
演出90点
キャラ90点
音楽90点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティがヤバい。想像以上だった。

まずTVアニメの『物語シリーズ』と全く異なる描写で描かれていたのに驚いた。そして3DCGとVFXをゴリゴリに活用。『傷物語』のグロテスクながらも美しい描写にマッチしている。

個人的にはTVアニメの描写の方が好きなのだけれど『傷物語』の方が断然クオリティが高いのは明白。「シャフト最高傑作」というのも納得だ。

世界観・設定

TVアニメの『物語シリーズ』の世界観も独特だけれど、『傷物語』の世界観も極めて独特だ。特に3DCGが作り出す世界観が凄い。本当にリアルだった。色彩も中々独特だったよね。

ストーリー

『傷物語』という小説1巻を劇場アニメ三部作にするのだから、非常に贅沢な尺の使い方ができる。実際、非常に贅沢な尺の使い方をしていた。『傷物語鉄血篇』は言ってしまえば、阿良々木暦、羽川翼、キスショット、忍野メメの出会いの物語だ。それだけに64分の尺を使っている。

この場合、通常であれば冗長的なストーリーになりがちなのだが、シャフトの映像表現が素晴らしいので飽きることはなかった。あっという間だったな。

演出

演出は正直なところ、TVアニメの『物語シリーズ』の方が好みだし、センスも秀でていると思う。けれども『傷物語』の方が動きがいい。特にアクションシーンのカメラワークはヤバい。実写のアクション映画を見ているようだった。

キャラ

キャラクターデザインは大幅に変更されている。かなりリアルな方向に近づいたのではないだろうか。このキャラデザに慣れるかどうかで『傷物語』の没入度が決まるけれど、僕は案外早くに慣れた。

それと『物語シリーズ』序盤のお話なので、阿良々木暦はまだ捻くれてるし、羽川翼がかなりあざとい。というか羽川翼可愛い。でもやっぱり阿良々木暦はキスショットを助けちゃうのだから、この頃からヒーローの素質があったということか。

音楽

『傷物語鉄血篇』では歌付きの楽曲が登場せず、基本的には劇伴のみ。印象的な劇伴はなかったけれど、作品の雰囲気作りに一役買っていたのは間違いない。

『傷物語鉄血篇』の感想

※ネタバレ注意!

アニメ作品というより、もはや芸術

『傷物語』は「シャフトの最高傑作」だと言われることが多いのだけれど、あながちそれは間違ってなさそうだ。クオリティに関して言えば『傷物語』は間違いなく「シャフトの最高傑作」だし、もはや芸術的な作品といっていいかもしれない。

しかも『傷物語』はストーリーの流れ的に、TVアニメの『物語シリーズ』を未視聴の人でも楽しめる。だからアニメではなく映画好きの方々にも高い評価を受けていたと思う。

特に素晴らしいのが3DCGとVFXだ。

VFXは「Visual Effects」の略称で、映像作品に現実ではあり得ない画面効果を実現するための技術のこと。

おそらく『傷物語』は、実写映画を制作するつもりでアニメーションを制作したのだと思う。3DCGで超絶リアルな背景を作り出し、そこにキャラクターを乗せる。そのあとにVFXで視覚効果を加えることで、さながら実写アクション映画のような世界観を作り出すことに成功しているのだ。

ではなぜ実写映画風に制作したのか。それはおそらく、”リアル”を追求したかったからだと思う。『傷物語』は吸血鬼のキスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードの物語であり、これまでの『物語シリーズ』以上にグロテスクで、そして美しい物語でもある。これを表現するには”リアル”が必要不可欠で、そのために実写映画風な世界観を構築したのだと僕は解釈している。

特に『傷物語鉄血篇』で最も印象的なシーンといえば、やはり阿良々木暦とキスショットの出会いだ。あれほどまでにグロテスクと美しさを両立したシーンは、他にそうそうないのではないか。あれは多分、実写映画でやろうとするとグロすぎてしまうし、普通の手描きアニメだと安っぽく見えてしまう。実写映画風のアニメーションだからこそ、グロテスクと美しさを両立することができたのではないだろうか。『傷物語』はもはや、芸術の領域に達していると僕は思う。

さいごに

『傷物語鉄血篇』の次は『傷物語熱血篇』だ。阿良々木暦とヴァンパイアハンター3人との戦いが描かれる。視聴次第、ブログにしようと思う。

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