今回は『大室家 dear sister(以下、大室家前編)』について語っていく。
『大室家』は、なもりによる漫画『ゆるゆり』のスピンオフである『大室家』が原作で、この『大室家』も、なもりが作者を担当している。
『ゆるゆり』は2011年夏クールにTVアニメ1期、2012年夏クールにTVアニメ2期、2015年秋クールにTVアニメ3期が放送されており、2019年には原作10周年記念となるOVAも発売された。
そしてついに『大室家』が劇場版でアニメ化されることになる。今回の『大室家』は前編・後編に分かれており、前編『大室家 dear sister』が2024年2月に公開された。アニメ制作はパッショーネとスタジオリングスが担当した。
『大室家前編』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 70点 |
世界観・設定 | 75点 |
ストーリー | 74点 |
演出 | 74点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 78点 |
作画
アニメ制作会社が変更されたこともあり、作画も大きく変わっている。かなり現代的な作画になっていて、線が太くなっているのが印象的。
全体的によく動くし、悪い部分も特に見当たらない。
一方で、作品としてギャグが抑えめになっていることから、動画工房版のような突拍子な映像表現もない。
世界観・設定
原作『大室家』を読んでいないので、そことの比較が難しいところだが、本編『ゆるゆり』に比べてまったりした雰囲気が強い作品なのだと思う。大室姉妹のカラーということもあって、全体的に暖色が強く、それが温かい家庭を演出することに成功している。
ストーリー
『大室家』の最大の難点が、おそらくストーリーだ。多分、原作漫画は『ゆるゆり』に比べて、エピソードの単位が小さいために、映像化しようと思ったときに、シームレスに繋げるのが難しいんだと思う。色々と工夫していたっぽいが、やはり場面転換は微妙。まあ日常系だから、そんなに気にもしないんだけどさ。
演出
先ほども述べた通り、場面転換が気になる。エピソードの間に挿入される場面転換(トランジション)が露骨すぎたので、ここはもう少し工夫が欲しい。前作『ゆるゆり、』みたいな工夫が欲しいところだ。
キャラ
些細な部分だけれど『大室家』のキャラは、全体的に髪色が大人しい。どのキャラも、まあ割と一般的な髪色をしている。一般的に、アニメキャラの髪色が派手であればあるほど、その作品はファンタジー重視で、逆に髪色が地味であればあるほど、リアリティを中心に描くことが多い(と僕は考える)。
それでいくと『大室家』は、たしかに本編『ゆるゆり』に比べると、リアリティを追求してる感じがある。
音楽
OP『My Dear SiSTARS!』は、加藤英美里、斎藤千和、日高里菜という本編以上のメンツになっていて、冒頭のメロディーがとても印象に残る。アニソンらしい構成だ。
ED『大げさに愛と呼ぶんだ』は、小学生が歌っているという設定なので、危ない感じの声質をしている。
『大室家前編』の感想
※ネタバレ注意!
とにかく温かくて微笑ましい
『大室家』は、『ゆるゆり』に登場する大室櫻子がメインで活躍するスピンオフ作品で、大室三姉妹周辺の温かい物語が、終始展開されている。そのため、ごらく部はほとんど登場せず、また櫻子の学校生活もほとんど登場しない。『大室家前編』の基本的な舞台は、大室家、撫子の高校生活、花子の小学校生活の3つだけだ。
また、本編『ゆるゆり』ほどギャグはキツくない。櫻子というADHDチックなキャラに対するかのように、撫子と花子がおとなしいので、全体的にギャグは穏やかなものになっている。
そして、色彩も暖色が強めなのが印象的だ。冒頭で大室三姉妹を描く際、夕日が差し込んでいたからというのもあるけれど、とにかくオレンジが強かった。そのため、全体的に温かい印象が強く、「ほのぼのとした日常」というイメージがついた。
そう考えると、ほのぼの日常にフォーカスしたTVアニメ3期は、なぜ寒色を強くしてしまったのか、という疑問が僕の中で出るんだけど、まあそれは一旦置いておこう。
ちなみに僕は『大室家前編』が公開されてから3週目(金曜朝イチ)に映画館で鑑賞したのだけれど、その日は『ハイキュー』の劇場版公開と被っていたこともあり、”200席以上のスクリーンで僕1人”という最高のシチュエーションを楽しむことができた。思う存分、ニヤニヤできた。笑
撫子の彼女は誰なんだ!?
やっぱり『大室家前編』を見ていて気になるのは”撫子の彼女”である。赤座あかねも然りだが、どうやら『ゆるゆり』の世界では、年を重ねれば重なるほど”がちゆり”になっていくらしい。
んで、撫子の彼女候補は3人いる。いじられキャラでケーキ屋のアルバイトをしている園川めぐみ、おっとり系の三輪藍、童顔系だけどドSの八重野美穂だ。
僕は個人的に、いじられキャラ系の園川めぐみが、撫子の彼女なのではないかと考えている。色々理由があるんだけれど、やはり「電話やメールの時間帯が夜10時以降」というのが、3人の中で唯一アルバイトをやっている(と思われる)園川めぐみのアドバンテージになっている。もちろん、いじられ系の園川めぐみが撫子に対して「好き」って言わせようとするのか、というのはあるんだけれど、実は恋人関係では、めぐみがSの方に回ってるかもしれない感じがしている。
作中で、ドS系の八重野美穂が、撫子に対して「いじりがいがある」と言っていた。それはつまり、恋人関係にまで発展していれば、3人の誰でも「撫子をいじる権利がある」ということである。
というのも、園川めぐみが恋人候補として薄い理由として、よく「いじられ系のめぐみが撫子に対して強気のはずがない」というものがある。でも、実は撫子の本性がM寄りなのだとしたら、たとえめぐみでも、2人だけのときは撫子をイジっている可能性があるということだ。というか、僕が心のどこかで、そういうシチュエーションを望んでいるだけなのかもしれない。結局のところ、これに尽きる。
多分現段階だと「彼女候補3人のうち誰かが特筆している」というわけではなく、ある程度可能性が分散されている。そのため、あとは視聴者が「どのようなシチュエーションが好きか」という点で、考察内容が大きく変わってくるんじゃないかなと思う。
僕の場合、撫子のギャップ萌えを楽しみたいので「本当はSなんだけど実はMだった」が楽しめる”園川めぐみ派”を推しているわけだ。それ以外にも、純粋に「可愛い」という理由だけで、”三輪藍派”や”八重野美穂派”を推している人も一定数いるはずである。
このように、結局は視聴者が求めるシチュエーションで、考察内容にバイアスがかかるんじゃないかなと僕は考えている。そうすると、妄想も捗りますし、二次創作も活発になるわけで、僕たちはまんまと、なもり先生の手のひらの上で転がされているわけだ。
でも僕はやっぱり、だいぶバイアスかかってるけれど、めぐみちゃんじゃないかなぁと思っている。実際に花子が顔を見て「いい人そう」って言っていたのだけれど『ゆるゆり』における「いい人」って、要するに「赤座あかねみたいな人」ということなのではないだろうか。それでいて「きれい系か可愛い系かが微妙な人」って言われたら、やっぱりめぐみなんじゃないですか!?
さいごに
こうなってくると、普通に原作漫画の『大室家』を読みたくなってくる。ゆーても現段階で6巻しか刊行してないので、気が向いたら読んでみようと思う。