【青ブタランドセルガール感想】そろそろシャフトで作ってみませんか?

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない(以下、ランドセルガール)』について語っていく。

『青ブタ』は鴨志田一によるライトノベルが原作で、2018年秋クールにTVアニメが放送。そのあと、2019年6月に『ゆめみる少女』、2023年6月に『おでかけシスター』が上映され、2023年12月に『ランドセルガール』が公開された。

アニメ制作は前作に引き続きCloverWorksが担当している。

目次

『ランドセルガール』の評価

※ネタバレ注意!

作画68点
世界観・設定73点
ストーリー70点
演出69点
キャラ75点
音楽70点
※個人的な評価です

作画

やはり作画は何とも言えない感じである。クオリティとしては「中の中」ぐらいで、制作スケジュールなどを考えると、妥当なクオリティだ。

せっかく『青ブタ』という強力なコンテンツを取り扱うなら、もっとクオリティを高めていいと思うけどな。でも、このクオリティでもかなりの興収が出ていることから、ビジネス的には、これぐらいのクオリティがちょうどいいということなのだろう。……シャフト制作版が見ていたい自分がいる。

世界観・設定

『ゆめみるシスター』では思春期症候群が登場しなかったが、今回はちゃんと発症。しかも、主人公の梓川咲太が発症するという流れだ。高校生編ラストにふさわしいテーマだと言える。

青春に燃える高校生活に、量子力学を用いたファンタジー要素を組み込んでいる本作は、やはり世界観が素晴らしいと思う。だが、やはり予算とかビジネス的な裏事情もあって、最高品質で映像化されていないのは否めない。本当に、シャフトとの相性は抜群だと思う。

ストーリー

小説1巻分を劇場アニメにしているので、尺は割と余裕があったと思う。梓川咲太を深掘りするストーリーになっていて、TVアニメだけではちょっと掴みきれなかった咲太の本質的な部分が見えていたと思う。全体的な流れも悪くはなく、尺も短めだったので、サクッと見れた感じだ。

演出

演出は、やはり「中の中」とか「中の下」ぐらいだろうか。悪くはないけど、良くもない。

映像的な表現が追求されることはほとんどない。というか今気づいたけど、背景はかなり使い回しているのではないだろうか。

とはいえ、梓川家の3人が抱き合うシーンにはグッと来るものがあった。でもやっぱり「これがもっとちゃんとしたリソースで制作されてたらなぁ」と思ってしまう。

キャラ

なんだかんだで、全ヒロインがしっかり出番を見せる。別に無理して全ヒロインを出す必要はなかったと思うけど、全く出さないわけにはいかないのも事実だ。

キャラで言えば、やはり梓川咲太の性格が見えてきたのがよかった。僕は原作を”まだ”読んでいないのだけれど、多分『よう実』の綾小路清隆と同じで、原作とTVアニメとでは随分と印象が違うのではないだろうか。梓川咲太の地の文を読んでみたいな。原作を買いたくなるな。……あぁ、これがKADOKAWAの策略なのか?笑

音楽

EDは『不可思議のカルテ』の全ヒロイン歌唱Verだった。流石にそろそろ変化が欲しい。たしかに『不可思議のカルテ』は名曲だが、ここまで連投されると、ちょっと飽きる。高校生編も本作で終了なので、次の楽曲に期待したい。

それとあらためて『青ブタ』の劇伴は、個人的に全く魅力的に感じなかった。というか劇伴がほとんど挿入されていない。笑 まあ劇伴を挿入しない方が、声優の声質を強く感じやすいけれども。

『ランドセルガール』の感想

※ネタバレ注意!

『続・終物語』を思い返しながら鑑賞

僕は『青ブタ』は『涼宮ハルヒの憂鬱』『物語シリーズ』を足して2で割ったようなものだと思っている。多分、これはあながち間違っていない。高校生特有の葛藤をメタ的なSF要素で演出する構造は、実によく似ている。そして『青ブタ』は、湘南を舞台にしていることもあり、これまた不可思議な雰囲気を演出することに成功している。

さて、僕は『ランドセルガール』を視聴していて、『物語シリーズ』の『続・終物語』を思い返していた。『続・終物語』は、阿良々木暦の高校生編ラストのエピソードで、その点では『ランドセルガール』と同じ構造だ。そして視点や描き方が異なるものの、”これまでの主人公を振り返る”という構造もよく似ている。

これまでの『青ブタ』は「思春期症候群に陥ったヒロインたちを梓川咲太が助ける」という構造だった。だが今回の『ランドセルガール』は、(おそらく)梓川咲太が思春期症候群を発症し、最終的には、桜島麻衣によって助けられるストーリーだ。

思春期を描く上で、親との関係性は外せない。梓川咲太が抱いていた葛藤は、あまり多くの人が経験するようなものじゃない気がするけど、一方で、子どもから大人になる際に必ず出てくる感情だから、多くの人の共感を得られると思う。実際、僕は自分自身を咲太と重ねていた。僕も咲太と同じように、可能な限り自分で生活しなければならない境遇に陥っていたことがあったからだ。親に甘えず、自分一人で黙々と生きる。僕は咲太のように気持ちを吐露することはなかったけれど、咲太は最後の最後で気持ちを爆発させた。咲太はこれまで色々なことがあって、それが溜まりに溜まって爆発したんだと思う。特に花楓の件については、本当に色々な意味で辛かったのだと思う。

このエピソードを高校生編ラストに持ってくるあたりが、かなり良いセンスをしているように思う。でも、相変わらずアニメーションのクオリティは微妙だった。

一回、シャフトで作ってみませんか?

『ぼっち・ざ・ろっく!』『SPY×FAMILY』などのヒットにより、アニプレックス傘下のCloverWorksのブランド力が、どんどん向上しているように思う。だが『ランドセルガール』に関しては、正直言って、アニメーションのクオリティはそこまで高くない。と、素人の僕が見ても断言できる。

一応、誤解が生まれないように補足説明すると、アニメーション作画における良作画とは、キャラクターの動きが優れていることに尽きる。それに加えて3DCGとの組み合わせや、カメラワーク、画面構成など様々な要素はあるけれど、基本的には、キャラクターがどのように動いているかが、着眼点として重要になる。たしかに『青ブタ』は、キャラクターデザインは高いレベルで安定していると言える。だがその代わりに、ほとんど動かない。そのうえ、画面構成も個性がない。せっかく『青ブタ』という作品が摩訶不思議な世界観を描いているというのに、肝心の映像がちょい微妙なのである。

一方で厄介なのが、このクオリティでも安定した興収を叩き出せている点だ。前作『ゆめみる少女』は興収が5億円を突破しており、下手すると興収だけで制作費を十分に回収できているのだ。そしてここから配信やグッズ販売などの二次収入が生まれるわけなので、余裕で黒字である。KADOKAWAはまだしも、アニプレックスにとってこれほど美味しい商売はないだろう。

だからそろそろ、ファンに還元してみてもいいのではないだろうか。ここでCloverWorksではなく、いっそのことシャフトに制作を依頼してみてはどうだろうか。アニプレックスはしょっちゅうシャフトと組んでるわけで、そこらへんは特に問題なさそうだ。しかも最近『五等分の花嫁』のOVAをシャフトが制作したのだけれど、「段違い」とまでいかなくても、明らかにクオリティが変わった。特に、演出面で明らかな違いがあった。

以上のことを考慮すると、制作会社をCloverWorksからシャフトに変更するだけで、『青ブタ』というアニメーション作品の質は大きく向上すると思われる。そのうえ、予算をたっぷり投下してくれたら尚良しで、新房昭之が制作に参加したら、もう最高だ。

『青ブタ』は、どう考えてもシャフトとの相性が抜群だ。あの不思議な世界観を、シャフト特有の演出で作ったら、絶対おもしろいに違いない。KADOKAWAもアニプレックスも、もう『青ブタ』で相当稼いでいるんだから、そろそろファンに還元してもいいのではないだろうか。これもブランディングの一環になる。ぜひともご英断を!

さいごに

『ランドセルガール』のラストで『青ブタ』の大学生編の制作が決定した。

電撃文庫のライトノベルは「続編アニメの制作に消極的」というのが、ラノベファンの一般見解だった。実際、電撃文庫の作品で続編アニメを制作するのは、かなりのレアケースだ。ただその中でも、近年の『青ブタ』は、電撃文庫作品とは思えないペースで続編制作がバンバン決まっている。ほかのバトル系作品に比べて低予算で制作できる上に、グッズやイベントでの収入が期待できるのが大きいのだろう。これは推測だけど、アニプレックスが主導になって企画をガンガン進めているんだと思う。そうなってくると、電撃文庫の「続編アニメの制作に消極的」というのも、もはや意味を持たない。

そして先ほどから述べている通り、僕はシャフト制作を熱望している。そろそろシャフトでファンに還元してみてもいいのではないでしょうか? ということで、続編を楽しみに待ちたいと思う。

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